ナ・バ・テア (中公文庫)

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本棚登録 : 3649
レビュー : 308
著者 :
shionさん 森博嗣(小説)   読み終わった 

ブクログにまだ登録されていないことに驚いた。再読です。
たぶん初読の時だったら、5つ星にしたのだろう。やはりこのシリーズには、時が経って変わる思いもあれば、変わらない思いもあるようだ。
この本に対する思いが変わったこと自体、「大人」になったように思えるが、未だに時々悲しくて仕方が無い時に、必ず浮かんでくる一文を。
『可哀想じゃない!誰も、可哀想なものか!みんな、立派だ。 みんな、立派に生きている。誰も、死にたくはないし、誰も、可哀想になんか、なりたくない、そうならないように、一所懸命生きているのに。』(P.283)
これが、映画でも有名(?)な「可哀想じゃない!」という台詞の元。原作が分からないと、この一言の中に隠されている辛さと葛藤を、なかなか感じ取れないだろう。

文庫ならではの解説で、よしもとばななさんの実に的を射る文章にただただ感激した。美しくさえある孤独。わたしにとっては、真夏の深夜に読みたい本だ。
ここでも森先生の巧みな言葉のチョイスに惚れ惚れ。「捨てるべき増槽もない」とかがたぶん一生忘れることのない文章のひとつ。
スカイ・クロラでも広がっていた生と死の談義を、ここではティーチャとクサナギが行うことになる。言葉がやや直球ではあるけれど、どこかに生きづらさを感じている人であれば、胸を突かれたような気分にさせられるだろう。

この本の始まりと、終わりも、おそらく全シリーズにおいて一番美しいのではないかと思う。個人的にとても心に沁みる一文で終わりとしよう。
「愛するために生まれてきたのではない。愛されるために生まれてきたのでもない。ただ、軽く……、飛ぶために、生まれてきたのだ。」(P.325)

きっと、あげられなかったひとつの星は、自分が変わってしまったに対する追悼だと思う。

レビュー投稿日
2015年6月4日
読了日
2015年6月4日
本棚登録日
2015年6月4日
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