Adventures of Huckleberry Finn(1885年、米)。
どこまでも陽気で陰影のない「トム・ソーヤーの冒険」に比べると、こちらは結構ビターな印象。黒人奴隷の人権問題が絡んできたり、大人の犯罪や紛争に巻き込まれたり…。トムの冒険はファンタジーだが、ハックの冒険は命懸けのサバイバル。一歩間違えば、皮肉めいた重い話になってしまいかねない内容だ。
しかし、児童文学として耐え得る軽やかさは、かろうじて失われていない。その理由は、ハックの逞しさ、ジムの善良さ、人種を超えた彼等の友情、そして何より、雄大なミシシッピ川の美しい描写のためだろう。ハック達が自由を求めてミシシッピを下る過程は、自由を求めて新天地へ降り立ったアメリカ人にとって象徴的であり、心の原風景なのではないだろうか。ヘミングウェイが本書を「アメリカ文学の源泉」と称したらしいが、さもあらんと頷ける。
個人的には、ジムを救出する穴を掘る場面での、トムとハックの掛け合いがツボ。ロマンティストで意固地なトムと、リアリストで合理的なハック。その対比が面白くて、何度読んでも笑ってしまう。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
海外文学(アメリカ)
- 感想投稿日 : 2010年11月2日
- 読了日 : 2010年10月31日
- 本棚登録日 : 2010年8月14日
みんなの感想をみる