阪急電車 (幻冬舎文庫)

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本棚登録 : 35201
レビュー : 4180
著者 :
佐藤史緒さん 現代日本文学   読み終わった 

構成は面白い。この頁数でよくまとめているとも思う。だが、この分かりやすい話のまとめ方に、私は爽快さよりむしろ危機感を抱いてしまう。こっちは正義であっちは卑怯、と単純に決めつけられていてグレーゾーンがないというか、善人サイドの人間に、自らの正当性についての疑問や葛藤が感じられず、独善的な感じが否めないのだ。

例えば、翔子を「卑怯な女をやっつける凛とした女性」という風に描いているが、本当にそうだろうか。男女関係に100%の白黒がつくことは少ない。翔子の婚約者が別の女に走ったのは、そもそも男が翔子に不満を抱いていたからだという見方もできるのではないか。「私の何がいけなかったのだろう」と悩むこともなく、100%他人のせいにした挙句こんな復讐をする女とは、別れたいと思う方が普通ではないだろうか。

また、電車内でおばさんが騒ぐのは NG なのに、女子高生なら OK なのは何故か。話の内容が微笑ましければ良いのか。それとも…、読者の年齢層を意識して、若者をひいきしてみせたのだろうか。だとしたら、やり方があざといような気がするのだが。

素直な読者は、微笑ましいエピソードにつられて「読みやすいー、ほっこりするー」とサクサク読んでいるうち、作者の価値観を刷り込まれてしまうのだろう。100%悪者の仮想敵を作り、それを叩いて読者をスッキリさせるというパターンは、商業的成功の王道ではある。ウケが良いのも分かるが、私は苦手だ。

レビュー投稿日
2011年6月1日
読了日
2011年6月1日
本棚登録日
2011年5月29日
9
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