転生佳人伝 寵姫は二度皇帝と出会う (角川文庫)

  • KADOKAWA (2021年1月22日発売)
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感想 : 7
5

転生ものにはつきものの前世の縁を何処まで引きずるか問題。
特に今回は主人公側はしっかり覚えているけれど、相手は一切覚えていないというパターン。
しかも、相手は地位こそ同じ立場にいながら性格も政治に対するスタンスも正反対と言っていいほどの別人。
それでもあなたは、愛した人の転生した相手だからと同じように命を賭けて守れますかと。

この点の折り合いをつけるだけでも骨が折れそうなのに、皇帝の周りは「死」の気配が色濃く漂っている。
実際犠牲者は出るし、彼を襲う者は生者ばかりとは限らない。
それなのに、彼の周りはびっくりするほど信頼できる人がいない。
読んでいるこちらも、中盤までは誰が味方で誰が敵か分からず随分びくびくしながら読む羽目になった。
こういう時、優しい人ほど怪しかったりするし、露骨に怪しい人ほど逆に大丈夫だったりするし。
見極めが難しい。
それを皇帝はずっと一人で続けてきたのかと思うと、後に化け物とまで称される裏側になっても致し方なしと思う。

陛下に言い渡された予言の真意。
誰が本当の敵で、誰が本当の味方か。
そして、自分の命と引き換えに神様に願い転生を果たした主人公の想いと、彼女が選ぶ未来とは。
どれもそれだけで一本お話が書けそうな内容の濃さなのだが、それぞれを丁寧に、それでいて納得できる展開と答えを用意してくれたことが本当に見事。
そのままだと化け物になっていたかもしれない皇帝を「人」として留めた展開は特に痺れるほど良かった。
このエピソードのために、謎解きとしてはよりややこしい真実となったが、主人公が取ってきたスタンスが今後の皇帝にとっていいものになると確信できた展開になっていたので余計に。
これだけの内容を一冊にまとめてきて、破綻せずに魅力的な作品に仕上げているのだから、本当に凄いとしかいいいようがない。
これは必読の作品だと思う。

前作の『仙文閣』も痺れるほどよかったんですけど、それを上回ってくるなんて(個人的感覚では)
三川先生、恐るべし。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説(作者名:ま行)
感想投稿日 : 2021年1月31日
読了日 : 2021年1月27日
本棚登録日 : 2021年1月27日

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