杜子春

著者 :
  • 青空文庫 (2005年2月7日発売)
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本棚登録 : 39
感想 : 7

中国、唐代の伝奇小説「杜子春伝」が元ネタの翻案作品。
主人公である杜子春は、仙人の鉄冠子によって何度も巨万の富を与えられるが、そのたびに浪費して使い果たし、元の貧乏生活に戻ってしまう。この繰り返しでお金のある生活の空虚さや人間の薄情さに気が付いた杜子春は、鉄冠子に弟子入りをする。その後杜子春は鉄冠子に何があっても声を発さないように、一度でも声を発したら仙人になることはできないと言われて山に取り残された。猛虎や神将に襲われたり、果ては地獄でエンマ大王に拷問されても何も言わずに耐えた杜子春だったが、自分の両親が無惨にも馬に変えられて痛めつけられ、その時母親の愛情に触れた杜子春は一言「お母さん」と口にしてしまう。

現代文の教科書に載るぐらいの短さでさっさか読める。
古い作品ながらも引き込まれるところはさすが。
児童文学雑誌「赤い鳥」に掲載された童話なだけあって非常に教訓めいている。
元ネタである杜子春伝では、声を出してしまい、愛を超越して俗世から抜けることが出来なかった杜子春を鉄冠子は嘆いているが、芥川版杜子春で鉄冠子は「もしお前が黙っていたら、おれはお前の命を絶ってしまおうと思っていたのだ。」などと言い、ここの双方の違いに芥川の明確なメッセージを感じる。
人生とは…と考えさせられるし読みやすいので学生におすすめ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年7月31日
読了日 : -
本棚登録日 : 2021年6月28日

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