天才と異才の日本科学史: 開国からノーベル賞まで、150年の軌跡

著者 :
  • ミネルヴァ書房
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感想 : 19
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  • Amazon.co.jp ・本 (404ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784623066827

感想・レビュー・書評

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  • 日本の科学の歩みについて解説した本。断片的には知っていることもありましたが、時系列でつなげると、なるほどと思うことがあり面白かったです。
    印象的だったのは、戦時中の医学研究について。具体的にはここに書きませんが、そういうことをしていた結果、今の医療があるのか・・・ということを、忘れてはいけないなと思います。
    近年は純粋な基礎研究で発見されたGFPが、色々な研究で物質を検出する際に使用できるようになったとか。そこをつなげた人もすごいですよね。
    読み応えのある本で、少し難しかったですが、その分面白かったです。

  • 明治の開国からつい最近の福島の原発事故まで、日本の科学者・研究者のことが書かれている。
    湯川秀樹・朝永振一郎のあたりからしばらくは大物がいたのに、原発事故のあたりの記述には、原発技術者の名前すら出てこないところに、著者の怒りを感じる。

  • 「第1回ノーベル賞受賞者として黄色人種はふさわしくない」

    なんだと?その理由を述べてみろ。まぁ、人種差別何だろう
    けれどね。

    もし、第1回ノーベル賞の選考条件にこの項目がなければ、
    1949年の湯川秀樹博士の受賞を待たずして、北里柴三郎
    博士が第1回で日本人最初のノーベル賞受賞者になっていた
    可能性は随分と高いのではないか。

    だって、「ジフテリアに対する血清療法の研究」が評価されて
    ドイツ人のベーリングが受賞しているのだから。

    本書はこんなエピソードを絡ませながら、幕末から2012年に
    ips細胞の研究でノーベル賞受賞者となった山中伸弥教授まで
    の、日本人科学者列伝になっている。

    あの有名な脚気論争についても勿論掲載。本当、厄介なお人
    だよ、森鴎外。厄介なだけではなく鴎外のせいで多くの兵士
    が脚気で命を落としているんだものね。

    いくらお勉強が出来ても、謙虚に自身の誤りを認めることが
    出来ないのは鴎外のプライドの高さか。それで殺されちゃ
    堪らないんだけどな。

    夏目漱石が文学ではなく科学の道に進んでいたらどうなって
    いたのだろうかとも考える。弟子である寺田寅彦への手紙に
    「今日の新聞で原子理論に関する講演を読みました。私も
    科学がやりたくなりました」とも書いているのだし、理工系
    への進学の希望も持っていたのだから。

    日本の科学の発展にとって欠かせない理研やそこに在籍した
    研究者たちの話、戦争と科学者の関係、欧米の研究者との
    国境や人種を超えた強固な繋がり。

    研究者個人の資質もさることながら、連綿と続く海外の研究者
    との個人的な繋がりが世界に大きく後れを取っていた日本の
    科学界を飛躍させたきっかけにもなったのだろうと感じた。

    213年の発行なので、最終章ではJCO臨界事故と福島第一原子力
    発電所の事故に触れており、この章では事故に関わった官僚及び
    科学者への批判がてんこ盛り。同じ科学者として、書かずにはいら
    れなかったのだろうな。

    若干、時系列が前後するので戸惑うこともあったが、戦中の731
    部隊とミドリ十字の関係などもあり、概ね興味深く読めた。

    この先、日本はまだまだ優秀な科学者を輩出できる国でいられ
    るのだろうか。国は金にならない基礎研究に金を出し惜しんで
    いるようだが。

  • サイエンス

  • 狙いや、扱っている要素は、悪くないと思うのですが、注釈が異常に多い、事象が起こった順序がわかりにくいなど、配置や構成が独特なせいか、読みにくいし、理解しにくかったです。
    また、読者に対して丁寧に情報提供しようとする姿勢が、かえって仇になっているように思います。

    しかも、文章も、あまりうまくないですし、日本の批判が多くて、読んでいて、あまり気持ちのいい本ではありませんでした。

    もうちょっと工夫すれば、いい本になったと思うんですけど…。
    もしかしたら、著者の意向が強すぎて、編集者が押し切られ、その結果、残念な仕上がりになったのかもしれません。

  • ひとつひとつのエピソードは、とても興味深いものがある
    福沢諭吉が物理や化学に詳しく、たくさんの研究所を作っているなんて、知らなかった
    原発事故については、多くの学者が主張を受け入れられずに、国に対する協力をしなくなってしまったらしい
    なんて、もったいない

  •  日本科学史というより日本科学者史という感じで、福沢諭吉、北里柴三郎から始まり、山中伸弥ら最近のノーベル賞受賞者まで、そして福島原発事故に話が及ぶ。
     どうしても湯川、朝永の理論物理学の占める割合が多いが、医学・生理学もけっこう割いており、広く科学全般に話題が及んでいる。業績の説明よりも、エピソードなどどのような人であったかという紹介の方が多い。留学先でアインシュタインなりパウリなり大物も多く出てくる。
     かと思えば、藤本陽一、吉田健介など決して一般には有名でない人も登場する。これは、筆者の経歴に関係ありそうである。まあ、多少の偏りがあるかもしれないが、日本科学史との題名はそう誇張ではない。
     日本の教育はずっと知識偏重で考えることを教えないので、新しいことは理解できないし評価もできない。評価せず、批判せず、は責任取らずにつながるとの筆者の主張は、大いに同意する。それは科学だけに当てはまることではないと思う。 

  • 正直あまり期待していなかったのですが、想像以上の面白さで楽しめました。科学者の歴史をこれだけ平易に解説している本は今までおめにかかったことがありませんでした。日本人が明治開国以来こんなに世界に影響を与えていたのかと誇らしい気持ちになりました。
    是非読んでみていただきたい。

  • 最近の原発のくだりはもっとも

  • 幕末期の近代科学導入から、ノーベル賞受賞者16人輩出に至るまでに発展した日本の科学は、どんな人たちによって築き上げられてきたのか?会津出身ながら湯川秀樹につながる日本の物理学をスタートさせた山川健次郎、国際レベルの加速器を造った仁科芳雄、戦時下で海洋生物学の研究に邁進した團勝磨・ジーン夫妻、筋肉収縮の機序を解明した江橋節郎…。戦争や国境を乗り越え、道を切り拓いてきた科学者たちの苦闘と歓喜の足跡から綴る、知られざる近現代日本科学史。

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著者プロフィール

元・帝京平成大学地域医療学部教授

「2013年 『天才と異才の日本科学史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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