海と毒薬 (新潮文庫)

3.65
  • (577)
  • (914)
  • (1386)
  • (103)
  • (14)
本棚登録 : 6831
レビュー : 793
著者 :
shunchさん 文学   読み終わった 

太平洋戦争中、捕虜の米兵を臨床実験の被験者にするという実際に発生した事件(九州大学生体解剖事件)を題材とした小説。神なき日本人の罪意識がテーマ。第5回新潮社文学賞、第12回毎日出版文化賞受賞作。

リーダビリティーが高く、引き込まれた。
凝った創り。すべてが終わったところから始まって、事件の始まる前に遡り、関係者それぞれの状況がそれぞれの立場からの一人称で語られ、事件の最中、事件直後の描写へと続く。
事実に基づいているだけあって、空気感が圧倒的。
物資がなく命が他愛なく消費される殺伐とした戦時中の時代の空気は重苦しく、肺結核で死んでいく患者達の描写はカミュのペストを彷彿とさせる。
あらすじを知って、731部隊やナチスの人体実験を思い浮かべ、凄惨な描写を覚悟して読み進めていたので、病院の臨床実験のくだりの描写の薄さは拍子抜けだったが、だからといってテーマの重さは変わらない。

タイトルの「毒薬」が「原罪」を意味しているのは明白だが、「海」は何だろう。
自分が読後思ったのは、過去から未来へと連綿と続いていく人の営みだ。
寄せては返す波のように、時代の振り子は揺れている。

レビュー投稿日
2013年10月14日
読了日
2013年10月13日
本棚登録日
2013年10月13日
2
ツイートする
このエントリーをはてなブックマークに追加

『海と毒薬 (新潮文庫)』のレビューをもっとみる

『海と毒薬 (新潮文庫)』のレビューへのコメント

まだコメントはありません。

コメントをする場合は、ログインしてください。

いいね!してくれた人

ツイートする