魔王 (講談社文庫)

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本棚登録 : 22827
レビュー : 1982
著者 :
まさしさん 作家:ア行   読み終わった 

クールな主人公と対極するようにウィットに富んだ文章で、魅力ある作品を送り出していた伊坂氏ですが、「魔王」は、今までの作風を覆すかのような、読者に、魔王の奔流に押し流されていないか。と投げかけてくる力強い作品でした。

超能力と思えるような特殊能力を備えた殺し屋たちのバトルロイヤルを描いた「グラスホッパー」に、死者の判定を行う死神の生活を描いた「死神の精度」に、未来を予言できる案山子が殺される「オーデュボンの祈り」といった、通常の人たちとは異なる能力を有した人物を主人公にした作品を多く排出しているので、タイトルを見ると、本当に魔物を支配する魔王が出てくるように思えるのですが、そのような異形の眷属が登場する訳ではありません(特殊能力は出てきますが)。

魔王が何者であるかは、主観となる人物により異なる。
安藤兄にとっては、深く考えずに大勢に流されてる個人が群集となる姿が魔王と映り、安藤弟には、兄が恐れていた群集をまとめる急先鋒に立っている犬養首相が魔王に映っている。
地球は一つでも、人の数だけ世界観があり、人の数だけ魔王が存在するのだと訴えてくる。

諦めが充満する日本で、安易な答えに乗ることで考えているフリをしていることを退ける内容に、改めて考えることの大切さを痛感しました。

レビュー投稿日
2010年4月18日
読了日
2010年4月18日
本棚登録日
2010年4月18日
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