強迫性障害の患者と、その治療にあたった精神科医との数奇な物語。強迫性障害がどのような障害であるかは少しはわかっていたつもりだったが、ここまで重くなるものなのかと驚いた。あまりに強烈なエピソードだったので、もはや想像に難かった。結局この主人公(患者)を救ったのは、治療者である精神科医の技法(CBT)ではなかったのかもしれないが、この治療者との関係性があったからこそ救われたというのは紛れもない事実だろう。家族の支えがあったことも見逃してはいけない点だと思う。
そして何よりも本人の力が大きかったことは確かなことであり、回復するプロセスは見方によればいかにもCBT的だったのかもしれないが、本人が拠り所にしたのは実際のところ技法ではなく、もっと感情的で、本来的で、人間的な面だったのだろうと思う。
精神疾患患者の自伝は種々あるが、この本はその枠を超えた、より人間学的な要素が多分に含まれた内容であったように思う。精神科医や臨床心理士、あるいは同様の障害で悩む当事者やその家族だけではなく、多くの方に読んでいただきたい一冊。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
精神医学・医学全般
- 感想投稿日 : 2012年9月22日
- 読了日 : 2012年9月22日
- 本棚登録日 : 2012年9月21日
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