イワン・イリッチの死 (岩波文庫)

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レビュー : 73
もの知らずさん  未設定  読み終わった 

 イワン・イリッチは俗物の象徴ではあるのだけど、少なくとも他者からみれば成功した人物だろう。裁判官なのだから。むしろそのことが読者に死をめぐる葛藤の苦しみを与える。これだけ上手く社会的に立ち回り、上り詰め、表面的にせよ楽しく生きたイワンでさえこうなのだ。では私はどうなのだろうかと。そのことは読み終わってから冒頭に戻るとよく分かる。イワンの妻や友人の残酷なまでの無関心さは、読む前のわたしの姿でもある。しかし読み手はしだいにイワンの不安に惹きこまれてゆく。ここがすごい。

 イワンが「自分を理解してくれる」と思えたのは、献身的に自分に接してくれる田舎者ゲラーシムと、自分そっくりの目を持った息子ワーシャだけだった。とくにゲラーシムは社会階層的には友人でもなんでもない。イワン自身も権衡であったなら彼を鼻にもかけなかっただろう。だが病に臥したイワンは彼に心を開く。こうしたことからも、人生にとって本当に大切なものはなにか、ということをつくづく考えさせられる。もちろん彼自身の思想の変化こそがもっとも読み応えのあるところだけれど。

 これはさまざまな論点、感想が出ると思われるので、読書会などで語り合いたい一冊だ。

レビュー投稿日
2019年2月26日
読了日
2019年2月18日
本棚登録日
2019年1月21日
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