漫画ひりひり

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本棚登録 : 72
レビュー : 31
著者 :
skmtさん 風カオル   読み終わった 

平成になったばかりの1989年2月9日、大分の専門学校で漫画コースの入学試験が行われた。その日は手塚治虫が亡くなった日でもある。18歳の歩は手塚治虫のような漫画家になりたかった。

入学して歩が思い知ったのは自分の画力の低さ。友人になった宇治山と黒田はプロ並みに絵が上手い。
滝先生の教えを受け、少しずつ成長していく歩。宇治山は早々に漫画家デビューして上京していく。黒田は絵が上手いだけで、漫画を描き上げることができない。
持ち込みをするためにバイトしたり、親に就職を勧められたりして、もがきながら努力する歩は、まだ画力が足りないものの読者の胸を打つようなセリフまわしを滝先生から褒められる。

漫画家デビューしてヒット作を出してもなお不安があるという宇治山。
イラストレーターになるくらいなら就職することを選ぶ黒田。
夢に向かって努力を続ける歩に感化され、講師を辞めて漫画家に専念することを決めた滝先生。
運命を賭けた月例賞に応募して大賞を取り、漫画家デビューを決めた歩。

平成の始まりの1年。彼らはお互いに影響し合い、高め合った。夢を掴んだり、諦めたり、もう一度努力する決心をしたりした。色んな考え方がある。皆が自分の人生を生きていた。
その時間を青春と呼ぶことは簡単だ。でも、海のなかにいるときに海の広さはわからない。

それから30年後、平成の終わり。手塚治虫みたいにはなれなかったけど、漫画家として地道に活躍している歩が宇治山や黒田、そして滝先生と再会して当時を振り返ったときにお互いを認めあっていることが何より素敵だった。
尊敬し合える関係。年齢も職業も時間もすべてを超える繋がり。青春の友情は消えない。

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周りの理解者たちに支えられて歩くんが成長していく様子は、それこそまるで少年漫画の主人公みたいだった。
階段を一段ずつ駆け上がるようにレベルアップしていく歩くんが純粋だからこそ、読みながら何度も「これはバッドエンドになるんじゃないかな」と思った。

努力したとしても夢が叶うことのほうが少ない世界。滝先生の言動からは漫画家の苦しみをすごく感じた。黒田くんとその彼女の考え方にもすごく共感した。何かを諦める決心をするのは、だらだらと続けることより何倍も苦しい。

そんな世界だからこそ、歩くんの夢は叶わないんじゃないかと思ったけど、おじさんになった歩くんは立派に漫画家を続けていた。
大人になっても続く繋がりって本当に素敵なものだと思う。自慢話でマウンティングするわけもなく、劣等感を持つわけでもなく、当時の友情を保ったまま尊敬し合える関係。
平成の最初に”漫画”で繋がった彼らの友情は、令和になってもずっと続いていく。

レビュー投稿日
2019年4月28日
読了日
2019年4月24日
本棚登録日
2019年4月24日
4
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