無銭優雅 (幻冬舎文庫)

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レビュー : 109
著者 :
skmtさん 山田詠美    読み終わった 

42歳、中年男女の恋愛。
だらしないように見えて繊細な二人は”死”を想いながら、恋愛を盛り上げる。愛が溢れ続ける生活のなかで徐々にあきらかになる栄の過去。両親、兄夫婦との暮らしのなかで慈雨の前に突然現れる本当の死。
なんやかんや言っても愛こそはすべてなのだ。All You Need Is Love。毎日、誰かと一緒に楽しく過ごせること、結局それが一番の幸せ。

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慈雨さんと栄さんのラブラブ話より、慈雨さんと彼女の両親との関係性を気にしながら読んだ。
年齢が上がれば親との関係も変わる。わずらわしいこともたくさんある。でも、親は自分よりもきっと先に死んでしまう。時間はたくさんあるのかもしれないし、全然ないかもしれない。それはその日がくるまでわからない。

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先日実家に帰ると、母が「塁くん、塁くん」と言っているので何のことかと思えば、先日NBAドラフト一巡目で指名された八村塁選手のことだった。これほど母がバスケットに対して興味を持ったことはかつてなかった。「そんなに塁くん見たいなら日本代表戦のチケット取ろうか」と訊くと、母は強く頷いた。
ドイツ代表との試合のチケットを購入し、母とさいたま新都心へ向かった。電車のなかから母は興奮している様子でこちらも嬉しくなった。スーパーアリーナで行われた試合は大盛り上がりで、塁くんの大活躍もあり、日本代表が接戦を制した。
https://www.youtube.com/watch?v=edL96ipV6VY
試合終了後、選手たちのインタビューもすべて見終えてからオペラグラスを顔に当てたままの母が言った。
「明日も試合あるんでしょ。もっと観たいな。明日のチケットはもう買えないの?」
そんなにバスケット好きになっていたのかと驚くと同時に、明日のチケットも買っておくべきだったと悔やんだ。
母がわたしに対して「何か欲しい、どこかに行きたい」と要求してくれることはほとんどなかった。実家に帰るとき、何か買っていこうかと訊いても「ビールでいい」としか言ってくれない。たぶん息子の負担になりたくない、と思っているんだろうな。すこしくらい親孝行したいのに。

だから、「もっと観たい」と言ってくれたときはすごく嬉しかった。”もっと”っていい言葉だ。
「今度この会場でバスケの天皇杯あるけどどうする? 塁くんはいないけどチケット取ろうか」と言うと、母はまた強く頷いてくれた。
欲しがってもらえることは嬉しいことだ。

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物語のなかで何度か登場人物たちが「意味ある偶然」というフレーズを使う。
先日幕張で開催されたサマーソニックでYUKIはこう歌っていた。
”運命は必然という偶然で出来てる”。

運命とか人生について考えだすとキリがない。頭が混乱するだけだ。
大切な人たちと毎日楽しく、自分の人生を生きる。意味や答えはあとからついてくる。そんなもんだ。

レビュー投稿日
2019年8月26日
読了日
2019年8月25日
本棚登録日
2019年8月25日
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