彷徨える艦隊 旗艦ドーントレス (ハヤカワ文庫 SF キ 6-1)

  • 早川書房 (2008年10月23日発売)
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感想 : 34
5

久々に、睡眠時間を削ってしまう面白い話に出会えました。
壮大な話、シカケに溢れた世界設定、想像をかきたてられる描写、散りばめられた知恵、個性豊かなキャラクターとその掛け合い。著者も凄いけど、訳者もまた素晴らしい。

これでSFでなかったら、万人にオススメできるんですが(笑

著者ジャック・キャンベルはなんとアメリカ海軍士官OB。艦隊に関するプロが、今度は宇宙を舞台に艦隊を戦わせる。かと言ってマニアックな表現に囚われず、艦隊に乗り込んだ政治家=軍事の素人に対して説明する形で、しっかり解説。
とは言え3次元空間で艦隊が動く戦闘シーンは読み飛ばしてると訳わかんなくなります。おかげで今2周目。

ストーリーはこんな話。
主人公は自分の指揮していた艦が敵に破壊され、救命ポッドで100年間も冷凍睡眠していた軍人。浦島太郎状態です。
味方に運良く救出されたものの艦隊は敵の只中。いきなり司令官に呼び出され「敵と交渉してくるから留守頼むわ」と言われて艦隊司令官の権限を移譲される。
敵と交渉しに行った司令官はアッサリ敵に殺されてしまい、主人公は満身創痍の艦隊を無事に故郷へ連れ戻す重責を背負わされる…。100年寝てたから知り合いはそりゃみんな死んでるし、現役の軍人たちの考えも変わっている。超アウェー戦ださぁどうする?

インバスケット演習かよ!

解説によると「危機的状況下での指揮権委譲」というテーマは海洋冒険小説の王道テーマのひとつらしい。
指揮権を委譲されてからの主人公のふるまい、少しずつ味方の信頼を勝ち得ていく姿は企業のマネジメントに通じるトコもあって、いつの間にか主人公に理想の上司像を重ねてしまうこと請け合いです。

特に主人公が一人悩むシーンが印象的。
そしていたずらに強権をふりかざすのでなく、理屈や感情に訴えて人を上手く動かしていく。公然と非難を受けて怒りを感じても、それをあらわにするのではなく、冷静に相手の薄い論拠を指摘して合意を形成していく。
そして積み重ねる勝利と、仲間からの信頼。
「もしドラ」読むならこっち読んだ方が面白い。ためにもなる。たぶん!

”規則を調べれば必ず、自分のやりたいことを正当化する根拠がみつかる”という言葉を読んで、自分が今やっている、小難しい法律を紐解く仕事にもやり甲斐を見出せたし(笑

睡眠時間が削られる以外の問題点は、まだこの話、完結していないということ。
最新刊まで読み終わったら、3周目に入らないと耐えられそうにない!

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: SF
感想投稿日 : 2016年1月9日
読了日 : 2010年7月3日
本棚登録日 : 2016年1月9日

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