物語創世 聖書から〈ハリー・ポッター〉まで、文学の偉大なる力

  • 早川書房 (2019年6月20日発売)
本で見る
4.06
  • (5)
  • (8)
  • (4)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 216
感想 : 10
4

重厚な装丁の、テーマは文学。ブクログでレビューを拝見しなかったらたぶん一生読まなかったであろう1冊。そして、読んで良かった1冊でもあります。
(図書館で借りたのですが、4,500円という価格もなかなかインパクトありますね…)

本著の内容は、歴史の中で物語が果たしてきた役割…というだけではなく、物語が歴史を作ってきた側面もあって、なるほど「文学の偉大なる力」を実感できます。
"Written World"という原題に対して、「物語創世」という邦題をあてているのもまた面白い。読む前は正直あまりピンと来ていませんでしたが、読み終わってみると非常に良いタイトルだなぁと感じます。
ちなみに、翻訳も非常に読みやすかったです。あと、本著はサイズがデカい割にページあたりの文字数はさほど多くないので、意外とスイスイ読み進められます。

本著で取り扱われているのは有名な物語が多いので、「あぁ、これか」くらいの感じで各章を読み始められるのですが、読み進むにつれて意外な事実を知らされ、著者の力量に感心させられます。
例えば、『ドン・キホーテ』であれば、なぜあのような展開になったのか?という背景、おそらく初めて著作権や海賊版といった問題に直面した本であること、等々。こんな調子で16章も続くのだから、著者の知識の幅広さと言ったら。
あと、個人的には源氏物語の章があるのが嬉しいです。「宮中での作法の手引書」として利用されていたというのは、神話としての物語から、より現実に則した物語への変容を感じました。

マヤ文化のくだりを読んで感じたのは、文字そのものの多様性が、人類の文化や発想の多様性を育んできていたのでは?ということ。アルファベットは確かに便利なんだと思うのですが、長期的に見たらどうなのか。その意味では、日本語も大事にしないといけないですね。

ただただ面白がって読んでも良いし、それでも考えさせられる引っかき傷が結構たくさんできそうな良著でした。
それにしても、私自身はホメロスもまだ読めでないし、この"Written World"は果てしないですね。。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 歴史
感想投稿日 : 2021年5月25日
読了日 : 2021年5月25日
本棚登録日 : 2021年1月24日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする