緋色の囁き (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (1997年11月14日発売)
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感想 : 240
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 養女に出されていた冴子がもとの宗像家に引き取られ宗像が経営する学校「聖真女子学園」へと入学する。聖真女子学園はお嬢様学校で有名だが、実態は規則の厳しい学園で冴子は戸惑い、また教室の異様な雰囲気にも気づく。やがて、この学園で噂される魔女の伝説。自らを「魔女」と呼ぶ女生徒。異様な雰囲気のこの学園で、「火あぶり」されたかのように、女生徒が焼死する。

 面白かった。囁きシリーズが綾辻氏の有名作であることは知っていたので、いまさら感はあるものの読んでみたのだけれど、ここまで面白いとは正直びっくりした。しかも、この作品が氏の四作目の作品で迷路館の殺人の次の作品だと思うとさらにびっくりする。この作品で綾辻氏がますます好きになって、もはや尊敬しつつある。
 本作とは関係ないが、本格推理小説を書いている私が読んだ作家の中で、ここまで推理の謎以外で――つまり、通常の何気ない描写部分に興味をひかれる作品が多い。しかも、その何気ない描写が推理の謎の解決の糸口であったりもするので、巧みな伏線と描写の作家ですね。
 本作品はそれが見事に出ている作品だと思います。***の章と通常の章の関連性は何なのか。冴子が殺人を犯してしまったのか。そして、舞台が女学園であることすら理由になっており、推理部分もとても興味深い作品でした。ラストの犯人登場の材料があったような気がしないのですが、別の人間を疑ってたので、え、という感じではありました。

 にしても、この作品最近発表されアニメ化、ドラマ化している氏のAnotherという作品と雰囲気が似ている。Anotherの「いない者」はこの作品では「魔女」であるし、主人公の女の子が何かしたらの秘密を持っている(といってもAnotherでは主人公ではなくヒロインだが)という点、舞台が学校という点、ホラーな雰囲気などなど。ネタバレになる部分もあるので書けないが類似点が多くある気がする。
 異なる部分はたくさんあるが、主に本作品は推理小説であるが、Anotherはホラー小説であり、論理的な解決がなされないこと。心理描写という意味ではAnotherより本作のほうが色が強いことなどだと思う。
 Anotherほどキャラクタの個性が強いわけではないが、Anotherを読んだことがあるならぜひ一度読んでみてほしいなあ、と思ったりもする。

 引き続き、囁きシリーズは読んでいこうと思います。本作品とても面白かった!

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 推理小説(国内)
感想投稿日 : 2012年8月10日
読了日 : 2012年8月9日
本棚登録日 : 2012年8月9日

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