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著者 :
  • Gollancz (2005年5月12日発売)
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本棚登録 : 12
感想 : 3
5

 男が何度も死んでは生き返る物語らしい、という前知識だけでこの本を入手。ネットで購入、手元に届いた時、本が思った以上に薄いと感じた。だって、何度も何度も死んだり生きたりを繰り返す物語なんでしょ、なんでこんな薄いの、と。読みはじめると薄さに納得がいく。前半はこんなテンポで話が進んでいいのだろうかと思うほど潔い早さで展開。潔いテンポはいったいどんな結末が待っているのかという期待感にもつながる。主人公ジェフは本人が40代である1980年代から大学に入ったばかりの1960年代に戻るということを何度も繰り返すが別人ではなく未来の記憶、知識をもったまま昔の自分に戻る。
この物語は長所がたくさんあるのだがどこを端折り、どこを丹念に書くかのバランスは特筆に価する。同じ登場人物が何度も繰り返される人生で登場するが主人公に与える影響は時には微妙に、時には極端にちがう。何度も生まれ変わることで経験するパワー、幸福と絶望がだれることなく細やかに描かれる。その細やかさはひょっとして作者がリプレイの経験者ではと思わさせるほどなのだ。80年代に生きた人間のみが知っている60年代の政治、社会事件や人々のメンタリティもきちょうめんに描かれていてリアリティがさらに増す。米国人、特にこの時代に生きた人はよりこの小説を楽しんだにちがいない、そう思うとちょっと悔しいぐらい。
「学生の時にもっと勉強していれば」。人はよくそんなことを言う。それは今の自分は学生の時に勉強してなかったことに結果だからというロジックからくるわけだが、果たして勉強していたら将来の自分はよりよき人生を歩んでいたのだろうか、その答えもこの小説の中にある。この小説の強さはこの誰もがふと考えたことのある「もし~していたら」のテーマだけに頼らず、そのテーマを作者の想像力とストーリーテリングの才能でもって、もっと先まで押し広げているところにもある。
SFというニッチェな分野に留まらせておくには惜しすぎる傑作。陳腐にならず哲学的になりすぎずもせずのエンディングも申し分ない。年をとるということは「どうせ」との戦いだなと思っていた時にたまたま手にとった本だったが、人生に「どうせ」なんてことはないということを思いがけず教わることにもなった。若者はもちろん30代後半以上にぜひ読んでほしい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2011年11月10日
読了日 : 2011年11月10日
本棚登録日 : 2011年8月6日

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