細雪 (中公文庫)

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本棚登録 : 1005
レビュー : 108
著者 :
smallpond51さん  未設定  読み終わった 

およそ930ページ。すごい達成感だ。11月をかけてゆっくり読もうと思ってたけど、もう手首がしんどいのでさっさと読み終えてしまった。文字小さいし改行少ないしページは多いしで大変だったけど、いざ読み終えるとその空気が恋しくもある。とある先輩が、「読み終えると親戚が増える、それが細雪なのです」なんて言っていたけど、確かにこの一ヶ月、蒔岡家にホームステイしていたような気分だ。作中では、何年もの月日が流れるのだけど。

こういう小説を、現代の日本で書ける人がいるんだろうか。清潔で、高貴で、それでいてどこか庶民的。たとえば、暦の上に生きて、この時季にはこれをする、春には平安神宮にお花見に行くとか、秋には月を観るとか、そういう、四季があることが当たり前なんだけど、それを有り難く享受する「日本人」の生活がやらしくなく描かれる。それは時代のせいもあるかもしれない(今そんなもの書いてもわざとらしくてきな臭い)けど、谷崎にしかできない、というか、谷崎の書くそれが、なんとも言えず風流であって、それを一行一行、すするように読んでいくのがこの小説の醍醐味でありました。

田辺聖子も解説で書いていたけど、一番印象的だったのはこいさんが雪子の足の爪を切っているのを、貞之助が垣間見る場面、だと僕も思う。足の爪を切る、という行為は、まるで主と従の関係みたいだけど、切られる方も切る方を信頼していないとなかなかできないことで、それが姉妹、しかもお互い思うところはいろいろあるはずの二人の間で行われているところに、中姉幸子の夫が出くわして、雪子が足を隠す、というのが、妖艶で(←言葉選び最悪。僕は絶対谷崎にはなれない)閉鎖的な姉妹間の特別な信頼関係と、その家の主人なんだけど、その間には決して入れない男の気まずさ、みたいなものがまざまざと浮かび上がってきてとにかくすごい。また僕は日本語が下手なので、こう書くとあたかも谷崎がドヤ顔でそう書いてるみたいに思われるかもしれないけど、するっとこの場面を流して次にいっちゃう潤一郎まじ男前。

ラスト50ページ、幸子と雪子が本家の長姉鶴子のもとにほんの僅かな時間だけ挨拶に行く場面。その別れ際で鶴子はぼろぼろと泣いているんだけど、幸子たちは逃げるように乗り込んだ車内で「芝居に誘うて欲しかったんと違うんかしらん」(p.872)と勝手に納得する。……って、いや、そんなわけねーだろ!と、ツッコむところで(自分の中での)大どんでん返し。谷崎はんはいつものようにその場面も流してどんどん話は次へ進んでいくんだけど、一方読み手である自分の中ではこんな疑問が生まれて膨らんでいるのだ、え、え? こんなわかりやすいすれ違いも放っとくの? もしかして今までもこういうのあったんかな、だとしたら今まで読んできたおれの『細雪』何だったの? ……とまあこういう具合で、もう一度読まなければいけない気にさせる、これはなかなか普通に出逢えるものじゃないと思うんですよね、僕はちなみに『本格小説』以来の感覚を味わいました。ああ、読書ってすばらしい(月並み)。

個人的に裏表紙のあらすじが完全にネタバレなのが気にくわない。

レビュー投稿日
2012年11月27日
読了日
2012年11月27日
本棚登録日
2012年11月27日
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