天災と国防 (講談社学術文庫)

著者 :
  • 講談社 (2011年6月10日発売)
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感想 : 31
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あまりに淡々と、至極真っ当な真実の警鐘が書かれていることに、大いなるショックを受けた。
そして、本論文を著したのが、戦前に活躍した物理学者 寺田寅彦先生であるということに、二度目のショックを受ける。

表題タイトルの論文を含む寺田虎彦先生の随筆集。
天災に対する備えを説いた本小論文は、充分に現代であっても通用する考え方。
現在の利益至上主義であり防災、国土保全、そして未来を考えることを忘れた官僚や国会議員達は、まず本論文を熟読し性根を叩き直す必要があろう。

長くなるが、本文を引く「悪い年回りはむしろいつかは回ってい来るのが自然の鉄則であると覚悟を定めて、良い年回りの間に充分の用意をしておかなければならないということは、実に明白すぎるほど明白なことであるが、またこれほど万人がきれいに忘れがちなこともまれである。
もっともこれを忘れているおかげで今日を楽しむことができるのだという人があるかもしれないのであるが、それは個人めいめいの哲学に任せるとして、少なくも一国の為政の枢機に参与する人々だけは、この健忘症に対する診療を常々怠らないようにしてもらいたいと思う次第である。」
熊本地震でいち早くテント村を立ち上げた野口健氏。そして彼を支えた総社市との連携は、まさにこの思想の具現化であると思われる。 http://www.noguchi-ken.com/M/2016/05/post-836.html
昭和9年に書かれた小論文「天災と国防」、これこそ、国会議員に読ませたい論文である。

表題先のほかにも、白木屋火災、函館大火、関東大震災、台湾地震の記録などがまとめられている。
また、災難雑考には、このような一節が
「もっともだいじなことは、今後いかにしてこういう災難を少なくするかを慎重に研究することだろうと思われる。」
「しかし、多くの場合位に、責任者に対するとがめ立て、それに対する責任者の一応の弁解、ないしは引責というだけでその問題が完全に落着したようが気がして....」
原発事故、オリンピック招致(災害だったんだ)、都知事....多くの災害に通じる考え方であると思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 随筆
感想投稿日 : 2016年6月23日
読了日 : 2016年6月23日
本棚登録日 : 2016年6月12日

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