戦場で書く 火野葦平と従軍作家たち

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おおきに!(smoneyb)さん ノンフィクション   読み終わった 

1960年1月 ひとりの小説家が、自らの命を絶った。
「糞尿譚」で第六回の芥川賞を受賞した作家、火野葦平。
帝国陸軍の兵士として従軍し、戦地で芥川賞を受賞。その後、陸軍の報道宣伝部門に異動し、従軍作家として戦地の情報を伝え、また、兵士の目を通した戦争の状況を銃後に伝えるために、代表作の「麦と兵隊」に始まる兵隊三部作を世に出した。

本書は、火野葦平が遺した20冊の従軍手帳を手掛かりに、NHKが制作した「NHKスペシャル従軍作家たちの戦場」そして「ETV特集 戦場で書く~ 火野葦平の戦争~」の取材記をディレクターがまとめたもの。
手帳を元にした丹念な取材、そして、NHKらしい現地への取材などを積み重ね、作品の内面に込められた作家の思い、そしてそこに至る背景。さらに、戦争時の現地の様子、戦況、さらには他の兵士の証言などにより立体的に構成され、火野葦平はじめ、軍部に協力したとされる戦争作家たちの姿を明らかにしている。
なかでも、火野葦平二ついての丹念な研究は、非常に興味深い。

元々、ジャーナリストとして、軍に協力したのではない。
大学在学中に幹部候補生として訓練を受け、そして一旦は稼業を継ぐために帰郷した小倉で応集し、陸軍伍長として大陸の戦場に赴く。
火野葦平が経験した戦場には、ジャーナリストとしての中立性や、軍に護られた取材はない。
地を這い、泥水を啜る、一介の兵士としての戦場に、彼は居た。
そして、その中で、彼は自分の手帳に文字を書き続けた。
その彼の能力に陸軍は眼をつけ、従軍作家として、後方に情報を送る仕事を行う。
しかし、軍隊の宣伝広報に協力するということは、真実のうち、書けないことがでてくるということでもあった....

戦後も彼は「花と龍」をはじめとし、多くの作品を世に出した。
しかし、彼は戦時中に戦争小説を書いたことで世の中に責め立てられる作家の苦悩を描いた「革命前後」を遺し、世を去る。

レビュー投稿日
2016年1月13日
読了日
2016年1月13日
本棚登録日
2016年1月13日
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