わたしたちが沈黙させられるいくつかの問い

  • 左右社 (2021年1月29日発売)
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感想 : 18
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女性が奪われてきた声、自らについての物語を注意深く掘り起こしながら、誰が、何がそれをもたらしたのかを、ユーモアと共に鋭く可視化する書。

読みながらふと、もう20年以上前に交わした会話を思い出した。学生の頃、おそらく就職活動に関連した交流イベントで、たまたま話すことになった男の子から好きな作家をたずねられ、当時好きで良く手に取っていた作家の名を数人答えると、「全員、女性の作家なんですね。」と驚かれた。私は、そう言われるまで作家の性別を格別意識していなかったから、驚かれたことに驚いて、その後はうまく会話を続けられなかった。男の子は敵意や悪気のある雰囲気はまったくなく、純粋に驚いていた様子だったので、余計に、好きな作家の名前をあげる際、全員が女性なのは何かおかしかったのだろうか?という疑問が頭の片隅に残り続けた。

本書を読んで、そのとき、続けられなかった会話の返事がようやく思い浮かんた。
「そうだよ。どうしてそんなに驚いているの?」
そんなふうに、さらりと答えられたらどんなに良かっただろう。

「私の人生の目標のひとつは、ユダヤ教のラビよろしく、答えが出ている問いに答えのない問いで切り返せるようになること、内面の統制が取れた人間になり、侵入者が迫るときには良き
門番となり、何はともあれこう尋ね返すのを忘れないことだ――『なんでそんなこと聞くんですか?』後になって気づいたのだが、これは敵意ある問いには常によく効く返し方で、答えがもう出ている問いというのは、たいてい敵意に満ちたものだ。」

女性が差別される社会を丹念に描写した文章を読むことは、頭の隅に押し込めやりすごしていた自分の体験を掘り起こす作業でもあり、解放感と辛さが同居する。

「あらゆる倫理的規範に反する言葉を見て、どのようにしてそうした言葉が世界を形作るのか、あるいはめちゃくちゃにするのかを理解するのは、素晴らしい訓練になる。 物事を明確にし、見るのを助けることこそ、もっとも偽りなく崇高な言葉の機能だ。」

私自身の中にも、差別される側の視点と、長年の社会生活の中で刷り込まれた差別する側の視点の両方が、混在している。言葉が、どのような意識の枠組みから発せられているか、何度でも繰り返し自分に問いかけることから、沈黙をやぶって会話が始まるのだと思う。

読書状況:いま読んでる 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2024年2月6日
本棚登録日 : 2023年7月23日

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コメント 5件

workmaさんのコメント
2024/02/07

学びが多そうな本ですね!(ΦωΦ)

snowdome1126さんのコメント
2024/02/08

>workmaさん
そうなんです〜自分の意識の枠組みを1度はずして考えることを促される本でした。実践はなかなかむずかしいですが……(;´∀`)

workmaさんのコメント
2024/02/08

「なんでそんなことを聞くんですか〜?٩(๑´0`๑)۶」と、あどけなく聞けるようになれるといいな…(*^^*)

snowdome1126さんのコメント
2024/02/08

ふふふ……自然体でできれば最強ですね( ̄ー ̄)ニヤリ

workmaさんのコメント
2024/02/08

自然体…防御装備最強…( ̄ー ̄)ニヤリ

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