当時の江戸が、世界中で最も清潔でエコな町だったことは何となく知っていた。本書では「農家」「町民」「武士」の3つの暮らしぶりに焦点をあて、詳細なイラストとともに、まるで見てきたように人々のエコな生活を描いている。奇しくも東日本大震災の一週間前に出版され、節電・節約ブームの中、にわかに注目を集めた本。
自然エネルギーをうまく活用した生活用水の確保や、徹底した燃料の節約とリサイクル、倹約と無駄の排除から生まれる様式美など、先人たちが生んだ知恵と工夫には感嘆するばかりである。実際には不便だったり、大変なこともあったろうが、間違いなく世界に誇れるシステムだったと思う。
以前『文明崩壊』(ジャレド・ダイアモンド著)という本を読んで、森林を伐採し尽くした文明は必ず崩壊していったという例を嫌というほど知らされたが、その中で森林保護をなし遂げて長く安定した時代を築いた稀な例として取り上げられていたのが、江戸時代の日本だった。
著者が描いているのは、そうした幕府の森林保護政策や、節約・再利用に適した社会・公共システムだけでなく、その裏側にある、倹約を尊ぶ江戸の人々の精神である。我々はエコ生活術よりも、この精神こそ学ぶべきだ。そんなことに気付かせてくれた本。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
歴史・地理
- 感想投稿日 : 2011年9月18日
- 読了日 : 2011年9月16日
- 本棚登録日 : 2011年9月18日
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