実は初のアガサクリスティ。殺人も名探偵もなし。ただ、一人の主婦が砂漠の真ん中で自分について考える話。なのに十分ミステリ、そしてこのミステリには正しい謎解きはない。
今の時代、「時間がない、デジタルデトックスでもして、ゆっくり自分に向き合って考える時間がほしい」と思っている人も多いだろう。しかし一体何を考えるのか?考えの果てに見えてくる「自分」は、よく知っている自分なのだろうか?
本作のヒロインJoanが自分の人生を振り返り、エピソードを改めてつなぎ合わせ、自分が思い込んでいた人生と全く違うストーリーが立ち上がってくる様は恐ろしい。
誰だって自分の見たいものしか見えない。自分が色眼鏡ごしに世界を見ていることに気づくのは難しい。そして、たとえ見たくない世界が見えてしまったとしても…その世界観を新たに受け入れるのはなんて困難で、もといた世界に立ち戻るのはなんて簡単なんだろう。
Joanと私の人生は全然違うけれども、自分の見ている世界って本物なのだろうかと空恐ろしくなった。そして「本物」の世界って、何…?
物語の時代背景として、「バクダッドに嫁いだ末娘」というあたりで、当時の大英帝国が眼前に立ち上がってきて、ロマンを感じる。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2021年2月27日
- 読了日 : 2021年2月27日
- 本棚登録日 : 2021年2月4日
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