日本社会のしくみ 雇用・教育・福祉の歴史社会学 (講談社現代新書 2528)

著者 :
  • 講談社 (2019年7月17日発売)
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COURRIER JAPON
著名人の本棚
篠田真貴子さんの推薦図書より

「歴史的経緯とは、必然によって限定された、偶然の蓄積である」
本の終わりに差し掛かるところで、印象的な一文に出会った。

社会のしくみは何によって作り上げられてきたのか。
また、どうやって変えていけるのか。
私は、どんな風に変えていきたいのか。

流れゆく時間の中で、いまの世の中の必然性から慣習が生まれていく。
それは合意形成を経て恣意的に作られたものだ。

本書は日本の雇用環境のみならず、広く、福祉や教育、格差や差別、戦争や軍隊の影響や、人々の潜在的な意識、アイデンティティに至るまで、あらゆる面から日本社会が考察されている。
が、福祉や教育に関する言及は薄い。
筆者は、雇用に絞って論を展開した。
物足りなさを感じる一方、その分、理解も深まりやすく、納得感は大きかった。

「労働史、経営史、行政史、教育史、さらには他国の歴史や慣行に至るまで、多くの領域にまたがるテーマである。」
と筆者も述べている。

かなりの大著だが、歴史の流れに沿って環境の変遷(経営者・労働者双方の選択であり、妥協点を歩んできた様)を語っているおかげで、さくさく読めた。

著書が雇用形態の文化的社会的な経緯に対して、「慣習の束」や「社会契約」と主張して、国際比較を論じているのも、興味深く感銘を受けた。
これは、国民自らが選び取ってきた道なのである。

勿論その議論の蚊帳の外に追いやられていた女性や非正規雇用の問題点も指摘している。

今まで生きてきた中で、ずっと思考の奥底で燻っていた日本社会の違和感への理解が深まった。
軍隊みたいだな…と軍隊に所属したこともないのに感じていた違和感は、まさしく、官庁や軍を倣い日本のあらゆる組織(企業や学校)が出来上がっていった歴史に触れ、納得である。

大部屋型オフィス、新卒一括採用、人事異動と終身雇用の成り立ちを言語化して頂き、職務や責任区分が曖昧でうやむやな働き方で成り立っている会社という閉鎖的なムラ、、、私が何に気持ち悪さと窮屈さを感じていたのかが明確になった。

また、日々組織や社会の透明性(情報公開)の重要性を進言してきたが、日本組織では歯牙にも掛けない理由がはっきりと分かった。
同質集団は自分達の領域を守りたいのだ。
筆者も最後に透明性の重要さを主張していた。
それは、政治にも経済にも、あらゆる組織や共同体に通底する真理ではないか。

社会の諸所の課題に対して問題提起をしている本であり、
答えを出すのは、著書を読んだ我々である。

私は技術職の為、ドイツのような職種を重んじ、ヨコ移動がしやすい流動性のある社会であって欲しいと願う。

さて、終章の③の福祉が充実した社会に変えていく為には何が必要か。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2023年1月8日
読了日 : 2023年1月28日
本棚登録日 : 2023年1月3日

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