ヴィヨンの妻 (新潮文庫)

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本棚登録 : 4829
レビュー : 456
著者 :
sotlanさん  未設定  読み終わった 

ほとんどどれを読んでも不快指数の高まるような作品群。ダメ親父が妻子に後ろめたい思いをしながら自分の楽に逃げ、("社会で認められるような")"家庭的""道徳的"となることができず、反対にそれを憎んでいく、という話の構図。
これを執拗に執拗に各編で繰り返し、しかもますます口を閉ざしては病んだ自問を深めていく。しまいには、敵視する"家庭的""道徳的"キャラクターの呼び名に、適当に理由をつけながらわざわざ作者の本名を当てるという風に、敵視対象をあげつらいつつ自嘲を含めるとかいう転倒したようなことをやっていて恐れ入る。

登場人物の繊細で神経質な気性。それと対になる行動の厚かましさ。自己正当化と自己矛盾。主役も脇役も、多くはうんざりするような、付き合い切れないようなところがある。薄暗さ。締めの言葉を投げつけて寄越すような感じ。
ただ、件の"家庭的""道徳的"であることの異臭も、全く分からないではない。

以下、印象的な一編と表題作。
トカトントンはリズムの良さ。一方でカオスに落ち窪んでいくような、でも実際何でもないような。
ヴィヨンの妻は終盤で急激に沈んでいくのが重苦しい。"泥棒"をキーワードに表面的な善し悪しが見える前半に比べ、後半は見えない・見えにくい部分での善し悪しが混ぜこぜになる。善し悪しそのもののを投げ捨てるかのような態度。

レビュー投稿日
2017年9月13日
読了日
2017年9月13日
本棚登録日
2017年9月11日
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