中村文則さん、多分3作品目。
デビュー作ということで、どんな作品なのだろうと思ったけど、とてもリアリティとかけ離れているような話にも感じられるし、とってもリアリティに溢れているとも思う。
主人公が銃を持った時の衝動と、そこから銃に恋をするように無機質になっていくところ
そして最後に、主人公が人を殺そうと決意し、そしてそこから色んな逡巡を重ね、そして決行するところ。この流れがとてもスムーズでスラスラと読めてしまった。
だけど1番自分が好きだなと思ったのは、その後だと思う。
1度主人公は自分の今後の人生やこれから起こることを考えて、銃で人を殺すことを止める。そしてそこから、自分が今生きているありがたみを感じたり、日常的に今までどこか機械じみていた感性が、人間らしくなるのだ。
しかし、そこから急展開。電車の中で衝動的に人を殺してしまう。
これはとても良く人間の中身を描いているなと思った。
緻密に計画を立てたものほど、日が経つにつれて不安は増すし、自分の中で否定の言葉が出てしまい断念する。
そして、そこから。そんな自分を突き動かすのは瞬間的な衝動なのではないかと思う。
その衝動の恐ろしさを垣間見た気がした。
もう一つ付いていた短編の「火」については女性の内面が悲しいくらいにずっと描かれていました。
どこか湊かなえさんの告白に似たものを感じた。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2022年5月8日
- 読了日 : 2022年5月8日
- 本棚登録日 : 2022年5月8日
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