ヘイリーの遺作
私がの好きな作家である。前作「ニュースキャスター」はアクション風であまり好きではなかったのだが、今回の作品はとてもよかった。
私はいつも彼の作品を登場人物を使い捨てにして業界を描いていると評する。今回もその感想は変わらない。直前に「いま、会いにゆきます」というきわめて登場人物が少ない映画を見たからかもしれない。野球で言えばピンチランナーのように、小テーマを描くために登場人物が現れ消えていく。登場人物をして時代を語らせるといわれる司馬遼太郎の作風に似ていなくもないが、ヘイリーは香辛料として小テーマを使っているように思うので少し違うかな。いずれにせよ、この本はリズムが小気味よいのでどんどん読み進むことができる。
探偵小説(古い表現だ!)と思って読むとがっかりする。伏線がきっちり張られていることもあり、(昨夜の映画とは違って)かなり前半部分であらかたのストーリーと真犯人がわかってしまう。テレビドラマのコロンボみたいな感じかな。わかってしまえば、後はどうまとめるかだけである。主人公を軸にして各種脇役を惜しみなく投入し、最後に大団円を迎えるというあたりいつものヘイリー節だと感心する。
(加えて、エピローグもまた粋である)
彼の作品はすべて読んでしまったことになる。でも、もう一度読むときがくるだろう。それはやはり「最後の診断」だろうなぁ。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
ミステリー
- 感想投稿日 : 2011年9月16日
- 読了日 : 2005年3月11日
- 本棚登録日 : 2011年9月16日
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