変身 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (1994年6月6日発売)
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感想 : 1678
5

私自身は活字を目で追っているだけ、なのであるが。

きっと脳内では
得た情報を次々に高速処理し、
認識され、記録され、映(想)像化する為のなんらかの処置がなされ、
こんな私にでも理解出来るように、と
忙しく動き回っているのであろう。

こんな風に、
自分と考える脳のことを切り離して思ってみたのは初めてだ。
そして、
その事をとても怖い、と思った。

今は従順で平和な脳が、
なんらかのきっかけで暴走し始めたら?

体を支配し始めたら?

自分が信頼している、今の自分が消えて、
全く別の人格にて、乗っ取ろうと脳が企てたら?

物語の主人公は、
ある事故がきっかけで、脳にひどいダメージを受けた。
今の医学では
当然認められていない『脳移植』の手術をうけ、
誰のものともわからない、
他人の脳に命を救われたわけではあるが、

やがて、その脳は
体を得た事で、蘇ったように主人公の体を支配し始める…

と、言う恐ろしい物語。

自分の核となるものは一体何なのか?

生かそうとする脳なのか?

生きたいと願う体なのか?

経験が培った心なのか?

存在意識を抱えた魂なのか?

それとも…。

答えも見つからぬまま、物語の幕は閉じられた。

二度と踏み入りたくない世界感であったが、

二度も読む返す必要は無いほど、記憶には深く焼きついてしまった様だ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2012年11月13日
読了日 : 2012年11月13日
本棚登録日 : 2012年11月13日

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