
本屋や図書館や古書店、とにかく膨大な書物の波間を彷徨うのがたまらなく好きである。
そのタイトル、表紙のデザイン、装丁の拘り、紙の手触りなど、小さな一冊一冊がそれぞれ息をしているかの様で、手にとる度、命に触れた様なときめきを感じてしまう。
ところで、今回はその「手にとる」についてちょっと考えさせられた。
世の中の未だ解明されていない未知のゾーンに踏み込んだテーマは大好きな分野で「失われた大陸」が本当にあったのかどうか?その真価を問う内容に惹かれ、献本に応募させて頂いたのだが、どうも本と自分の気持ちがかみ合わない。
面白くない訳では決してないのだが、どこだろう?なぜだろう?しっくりこないまま読み進んでゆくと、著者の思いが綴られていた章で、そのワケがはっきりわかった。
「ムー大陸やアトランティス大陸の伝説が広く興味を持たれている理由は大陸が沈んだという現象よりも、天変地異によって国や文明が滅んだという悲劇をはらんでいるからでしょう…etc」
そうか。私の興味も一万年以上も昔、今より優れた文明を持つ都市が一夜にして滅んだ、というミステリアスに惹かれ、強く知りたいのはその情報だったのだ。
だが、地質学者である著者が明らかにしたかったのは、
海底調査を行い、地質を調べた上で『本当に海に沈んだ大陸はあったのか?』という真実であった。
専門的な内容に苦戦はしたが、読者に違った切り口で伝説の一端を知って欲しいという著者の熱は、本を「手にする」間口を広げてもらった様な新鮮な読書体験となった。
- レビュー投稿日
- 2017年8月8日
- 読了日
- 2017年8月8日
- 本棚登録日
- 2017年8月8日
『海に沈んだ大陸の謎 最新科学が解き明かす激動の地球史 (ブルーバックス)』のレビューへのコメント
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