秘密 (文春文庫)

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著者 :
MOTOさん  未設定  読み終わった 

読後、何となく開いた手のひらを、じっ…と見つめてしまった。

(持っているものと、
私のものだ、と信じていたけれど。)

その手の中には何も無かった。


妻と娘を乗せたバスが崖から転落。
奇跡的に娘は助かったが、妻は死んだ。

「行ってきまーす♪」
笑顔で出かけて行った彼女達は
数日後には
「ただいまぁ~♪」と、
元気に帰ってくるはずだったのに。

何て不確かな明日。
握りしめていた、と信じていたモノは
いとも容易くするり、と抜けて無くなってしまう…。

元々、無いものだったのだろうか?
仏教でいう『本来無一物』と言う言葉が示すように。

が、
東野さんは『死』から再び妻を取り戻してくれた。
それも、娘の肉体に。

(…ファンタジー?)
現実を突きつけられて絶望している身に、
寓話の類は浸透しにくいかな…と、一瞬感じた警戒心であったが、それも
あっという間に消滅してしまった。

妻の魂が宿った娘と共に生きる、父親の複雑かつ深い心情には、ほんと涙が溢れて止まらなかった。

『死』なんかには絶対わからない。
この手の中には元々何も無い、
何一つ、自分のものじゃない、なんて嘘。

妻も夫も子供も家族も、そりゃ自分の体でさえ
自分のものでは無い…かも知れないけれど、

大事な人達への愛だけは
この手の中から溢れ出す。

手のひらのなかに温かさが戻った気がして、
もう一度、硬くぎゅっと握り締めてみた。

レビュー投稿日
2012年12月3日
読了日
2012年12月3日
本棚登録日
2012年12月3日
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