ある朝、主人公の銀行の業務主任を務めているKが逮捕されるところで物語が始まる。突然見知らぬ男たちが横柄な態度をとりながら、「君は逮捕された」と高らかに宣告し、彼の自宅に入ってくる。Kがなぜ逮捕されたのかと問い詰めても適当にはぐらかされ、やがて「なぜかは知らないがただわたしは君を逮捕するという上からの指示に従っているだけだ」と白状する。後日、電話で出廷の知らせがKの元へ来た。法廷につくと、すでに多くの人が集まっていたが、聴補人全員の胸に役所のバッチがつけられていた。彼らは一人残らず役所側の人間だった。
この後も、訴訟を受けた事実と暗示的で不可思議な出来事は、Kを追い詰めていく。最初は理性を保っていたKだったが、日常の中で奇妙な違和感が起き続けることで、Kの精神は精神的に追い詰められていき、物語が進むにつれて妄想と現実の世界のなかで混乱していく。
私は、最初は懸命に努力をして、抗おうとしていたKが、精神を病んでいく所に切なく感じた。Kのいた不条理な世界は奇妙に感じたが、今私たちが過ごしている社会に似ている所があり、私たちにもあり得ることではないのかと思った。私たちが知らないだけでKが受けた不条理は今の社会でたくさん転がっていると思う。
この本は最後までなぜKが逮捕されたのかもわからず、物語が終わります。作者のKはそこの描写ではなく、Kが精神を病んで、だんだん社会から弾き出されるところを伝えたったのではないかと思う。何1つも解決しないし、爽快感を求めている人には向かないが、私たちの身近にも起こりうる話なので読んで欲しい。
- 感想投稿日 : 2019年10月7日
- 読了日 : 2019年8月29日
- 本棚登録日 : 2019年10月7日
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