暇と退屈の倫理学 増補新版 (homo Viator)

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  • 太田出版 (2015年3月7日発売)
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『なぜ暇は搾取されるのだろうか?それは人が退屈することを嫌うからである。人は暇を得たが、暇を何に使えばよいのか分からない。このままでは暇のなかで退屈してしまう。だから、与えられた楽しみ、準備・用意された快楽に身を委ね、安心を得る。

では、どうすればよいのだろうか?なぜ人は暇のなかで退屈してしまうのだろうか?そもそも退屈とは何か?

こうして、暇のなかでいかに生きるべきか、退屈とどう向き合うべきかという問いがあらわれる。〈暇と退屈の倫理学〉が問いたいのはこの問いである。』

意図的なのか、「倦怠」、「飽き」、についての考察が足りないような気もするが、暇と退屈に関する歴史的、経済的、哲学的、人間学的、倫理学的、と多方面の考察を展開していて面白い。ヘーゲルを扱っているが肩苦しくならずに、すらすら読めるので退屈しない。暇潰しにはちょうど良い。

さて、ヘーゲルにおける退屈の第三形式としての「なんとなく退屈」に対する「決断する」という解決は、確かに危険であるし、第一形式との循環関係から逃れられないという指摘はもっともだが、退屈から逃れる「決断」の先にどんな「生」があるのか、ここを深く深く考えるもの楽しいのかな、と思ってみたり。

暇と退屈に対する3つの結論とは、
1.暇と退屈への理解が深まったところで、そのことにより何かを為すべきことなど何もないということ。
2.「単なる消費者」に陥らずに人間らしく、「贅沢に浪費」することを生活に取り戻すこと。
3.動物のように、「とらわれ」、楽しみ考えること。

結論は特に特別ではないが、全てを読んだ後に感じるものは、世界は退屈ではない、ってことなんだと思うな。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2018年1月7日
読了日 : 2018年1月7日
本棚登録日 : 2018年1月7日

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