少女キネマ 或は暴想王と屋根裏姫の物語 (単行本)

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店 (2014年2月27日発売)
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感想 : 54
5

いやぁ~、こういう掘り出し物に出会うから
本読みは止められない(笑)

最後のページを閉じた後も胸にストーリーが広がり続け、
登場人物たちのその後に思いを馳せ、
クライマックスを思い出すたびに、どこで誰と何をしていても心ときめき、胸が熱くなり、いつしか泣きそうになる。
そんなお気に入りの本が僕には何冊もある。
そしてまた一冊、
忘れられない物語がここに。

自分の内側に刺さり、何故だかずっと抜けない一冊。


あらすじはこんなん。

二浪の果てに吉祥寺にあるお坊ちゃん学校に入学した十倉和成(とくら・かずなり)は、築数百年の木造学生アパート、友楼館(ゆうろうかん)に住むことに。
ある晩、友楼館の十倉の部屋の天袋から這い出てきたのは屋根裏に住む物の怪ではなく、なんとセーラー服姿の美少女、黒坂さちであった。
身よりがなく苦学生である彼女の生い立ちを聞いた十倉は、
引っ越し資金が貯まるまでの期間、さちが屋根裏で生活することを了承する。
内心甘い生活を期待する十倉だったが、実はこの男、天才的映画監督の才を持っていた親友・才条三紀彦(さいじょう・みきひこ)が撮影途中に謎の死を遂げた、その真相を探るという大きな使命を持って九州から上京したのだった。
やがて、さちや友人たちとの出会いに導かれ、才条が作った未完成の映画に辿り着く十倉。
そしてこの未完の映画にこそ、死の真相が隠されていると気付くのだが…。


物真似では終わっていない森見登美彦を思わす古風な文体と
溢れでる生きた名言の数々。
(飴玉を口の中で転がすように何度もお気に入りの箇所を反芻したくなる)

ほとばしる熱量を有した
胸躍るボーイミーツガール的青春譚に
ほどよく効いたミステリーの風味。
(「僕が死んだらこの本を棺桶に入れて欲しい」と言った乙一や
綾辻行人や辻真先が絶賛したのも頷ける出来!)

ポップで漫画チックな表紙のイラストから
「これは今流行りのラノベ的で
軽いラブストーリーだったりして…」と思いきや、
いやいやどうして
意外に硬派で一本筋の通った
一人のお馬鹿学生の再生の物語でした。


主人公は髪はくせっ毛で根性なし、人並み以上に煩悩にまみれ、たびたび間違った方角に全力疾走し、あげく袋小路で泣き濡れるような
星香大学一年、「暴走王」こと十倉和成(とくら・かずなり)。

涼やかな声と深く透き通る瞳、艶やかな黒髪のおかっぱ、白く綺麗な顔立ちという大和撫子的風貌を持ち
みたらしだんご屋でアルバイトしながら、
6年もの間、女人禁制の友楼館の屋根裏で潜伏生活をしていた(笑)
セーラー服姿の「屋根裏姫」こと、17歳の女子高生、黒坂さち。

明治期の貧乏学生を思わせる(笑)
坊主頭に着流し姿と
手には教科書を十字に束ねたブックバンド、
趣味は読書と絵画、食事はすべて人のおこぼれをいただく(笑)という
映画嫌いで変わり者の友楼館の住人、亜門次介(あもん・つぐすけ)。

高貴な生まれでありながら、
たった一人の運命の人を捜して合コンに明け暮れる
演劇部のチャラ男で友楼館の住人、久世一磨(くぜ・かずま)。

牛乳瓶の底を思わせる度の強い眼鏡をかけたもやしのような住人、
キネマ研究部部長の宝塚八宏(たからづか・やひろ)。

ワケありの人間が集う友楼館の中でも最も奇怪な噂を帯びた伝説の人物、伊祖島亨(いそじま・とおる)。

大輪の花のごとき長身で、類い稀なる毒舌家の「キリコ嬢」こと、七瀬桐子。

そして、映画という魔物に飲み込まれ、
謎の死を遂げた主人公・十倉の親友、
才条三紀彦(さいじょう・みきひこ)。

などなど登場人物たちのすべてが
コレだけキャラ立ちしまくってるのもスゴい。
好むと好まざるとに関わらず
なぜかみな映画に取り憑かれています。

中でも、やはりこのヒロインがいなければ、
この作品は完成しなかったと言える、黒坂さちの
「絶滅危惧種・大和撫子」を完璧に体現した恐るべしそのキュートさ!(笑)

世話になった御礼に何か食事を作って差し上げたいと言い、
どしゃ降りの雨の中、傘もささずにおにぎりを届けにくる義理堅さを見よ!(笑)

腹の虫がきゅ~うと鳴るたびに頬を赤らめ、
「死にとうございます…」と恥じらう仕草に
僕のアホウな胸も激しく高鳴ったのでした(笑)
(いや、コレは男なら一発でメロメロだし、女性から見ても嫌みなく可愛いと思えるキャラじゃないかな~)

それとは対照的にいやが上にも香り立つ女子力の魅力に抗うため、
黒坂さちには絶対に手を出さぬとお互いに宣誓しあう
アホウで煩悩だらけの十倉と久世が笑えます。

ひたすら己だけの道を邁進する亜門や
映画や芝居に節操なく手を出すが己の欲求は自覚している久世、
暗い目をして陰鬱な宝塚でさえ、映画の淵を日々さまよってるのに
みんなと比べ自分が何をしたいのかまるで把握できてないことに思い悩む主人公の十倉の心情が切なく、
同じように悶々とした青春時代を送った僕には
まるで鏡を見せられたかのようにリアルに胸に響いてきたし、

十倉に正体不明の熱を宿し、人生の起動を曲げたあげく、
唐突にこの世から消え失せてしまった親友への思いも、
同じく僕をボクシングや音楽の世界に誘い先に逝ってしまった親友を嫌でも思い出してしまったなぁ~。


友楼館に伝わる『女人禁制の呪い』。
古本屋で熱心に立ち読みする
1900年代初頭に死んだ本に宿る幽霊。
さちを乗せて白いベスパの鼓太郎と街を爆走したベスパドライブ事件。
(ルパンとクラリスの逃亡劇を彷彿とさせる物語中最も印象的なシーン!)

やがて、ベスパに乗ることによって才条が見たはずの景色を捉え、
十倉は親友が残した未完の作品を仕上げるため、映画制作へと突き進んでいく。

中盤以降の怒涛の展開が素晴らしく
特にエモーショナルに胸を打つ最終章は一気読み必至!

作者が言った「このラストシーンが書けたら死んでもいい」は
ラスト一行の奇跡に集約されています。

森見登美彦の「夜は短し歩けよ乙女」が好きな人、
映画や演劇や古本屋に目がない人、
古いカメラやベスパに思い入れがある人、
可愛いヒロインに餓えてる人、
そして良質の青春物語が読みたい人なら
自信を持ってオススメします。


★なんとこの作品のために作ったプロモーションビデオがあります!歌付きで小説の世界観が味わえますよ~♪↓
https://www.youtube.com/watch?v=pCEb1i2cU9Q&feature=youtube_gdata_player

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2015年6月11日
読了日 : 2015年6月11日
本棚登録日 : 2015年6月11日

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