推定少女 (角川文庫)

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本棚登録 : 3184
レビュー : 326
著者 :
円軌道の外さん 小説   読み終わった 

桜庭一樹の小説は
闘う者たちのバイブルだ。

ページをめくるたびに聞こえてくる
反逆のメロディー。

理不尽な大人たちからの制圧に
反旗を翻す
少女たちの咆哮。

新しい何かを始める時、
諦めの鎖を断ち切りたい時、
自分を奮い立たせたい時、
僕は桜庭さんの小説を欲し
弱虫な心に楔を入れるかのように言葉を刻みつけ、
『抗う意志』と
『ドン・キホーテの精神』(到底適わない相手であっても、一矢を報いようとする気概)を手に入れる。

危険な街のことを
『ほんとの夜を持った街』と表現したり、
行間から立ち上っては香る
『夜の匂い』だったり、
10代の頃のあのどうしようもない焦燥感だったり、
色白で儚げな美少女と黒光りする無骨な銃の
絶妙なコントラストだったり、
桜庭さんが紡ぎ出す切ない物語や血まみれの世界観は
どれも僕の琴線に触れて
いつまでも心を揺さぶり続ける。


思春期特有の未来への不安。
人生という戦場から流れ込んでくる
見えない硝煙の匂いに
恐怖し押し潰されそうになる
15才の少女、巣籠カナ(すごもり・かな)。

恋もまだ知らず
ユニセックスで少年のような体型のカナだけど
ガラス細工でできた少女人形のように
本当は繊細で壊れやすい心を持っている。

物語はひょんなことから
義父に怪我を負わしてしまい
警察に追われる身となったカナが
銃を持ち記憶を無くした
全裸の美少女・白雪(しらゆき)と出会い、
夜の街、東京を舞台にした逃避行劇が描かれていく。

行きたい場所などなく、
ただただ此処ではない何処かへ
逃げるためだけの絶望的な逃避行。

だけどこの作品のスゴいところは
カナたち少女の絶望的状況を
生き生きとしたキャラ設定のおかげで
あくまでも軽やかに
ユーモラスに描いていること。

ゲーマーで電脳戦士のオタクなお兄ちゃんや
ガンマニアの火器戦士・千晴との
友情や絆を絡ませながら
旅を続ける中で苦悩し成長していく少女たちが本当に眩しいし、
ハードボイルド小説としても見事であり
良質な青春小説とも呼べる作品となっている。

それにしても何故大人は
かつて自分が子供だったということを、
いとも簡単に忘れてしまうのだろう。

どんなにあがき一矢を報いたいと願っても
まごうことなく15才の現実は
圧倒的に無力であり、
ほろ苦い結末をもって激しく胸に迫ってくる。

初期の桜庭作品に顕著なラノベ的世界観は
読む人を選ぶだろうけど、
大人たちに心を殺され
無力感に夜空を見上げたことのあるすべての子供に、
またはそんな子供だった大人には
強烈な余韻と共に
間違いなく心を射抜く稀有な作品だと思う。

なお、この作品は
桜庭さんが当初構想していたがボツになったバッドエンド版と、
ファミ通文庫で実際に発表されたハッピーエンド版と、
ハッピーエンド版をさらに改良したファイナルカット版と、
ゲームさながら
異なった三つのエンディングが収録されていて、
より深くその世界観を味わえます。

レビュー投稿日
2014年8月27日
読了日
2014年8月27日
本棚登録日
2014年8月27日
16
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