GOTH―リストカット事件

3.73
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本棚登録 : 6125
レビュー : 862
著者 :
円軌道の外さん 小説   読み終わった 

長らくブクログを休んでいたこともあり、
今一度、自分の原点を探ろう企画の第3弾(笑)


いやぁ~、この作品が世に出て
もう16年経つのか…
そりゃ、自分も歳をとるハズだわ(笑)。

衝撃的な17歳でのデビュー作『夏と花火と私の死体』以降、
ハートフルな作風でライトノベルの旗手だった乙一が
満を持して本格ミステリーを意識して書いた
いわゆる『黒・乙一』を代表する作品がこの
『GOTH―リストカット事件』であります。
(後にこの作品で第3回本格ミステリ大賞を受賞しています)


読みやすさはライトノベルそのままに、
世界観はダークで軽妙な青春小説。
(矛盾してそうだけど、そうとしか言えない世界観なのです笑)

連作短編なのですが、どの話も
読む者をミスリードさせる巧みな構成と
散りばめられた伏線とその鮮やかな回収術の妙、
ラストにかけての衝撃のどんでん返しが
とにかく見事で
騙される快感が味わえます。


で、メインキャストは高校生の二人。

陶器のような白い肌を
黒を基調とした服装でくるみ、
群れることを嫌い
常に人を避けて行動する女子高生、森野夜(もりの・よる)。

そして、もう一人は、
人間が持つ暗黒な部分に惹かれる根っこは森野と同じでも、
普段は普通の高校生を装う『僕』。

二人に恋愛感情はなく、
お互いの趣味趣向が一致しただけの
ただの話し相手というスタンスで
物語は進んでいきます。
(この設定は後に発表された米澤穂信の小市民シリーズの主人公、小鳩と小山内ゆき
の関係にダブってきます)


この小説が後続に
多大なる影響を与えたワケは、
何よりこの
変わり者の高校生カップルの行動や理論が斬新だったことに尽きます。

二人は猟奇的殺人を解明していく探偵役を担いながらも、
殺人者を見つけても
証拠品を拾っても
決して警察を呼んだり
犯人を捕まえて手柄をあげようとはしないのです(笑)

あくまでも
自分たちの興味を満たすためだけに動き
楽しみ、
殺人者の心理を読み、
時にはあえて犯人たちの罠にかかったり、
主人公の一人である『僕』などは
ワザとヒロイン森野を
危ない目に遭わせたりするのです。 


異常な世界にどんどん惹かれ
犯罪者の心理と同化していく『僕』と、

暗黒なものに惹かれながらも
常に被害者側に立つ思考を持った森野夜。

この微妙なズレを考えながら読むと
本当は切ない物語なんですよね…

勿論、彼らのアブナい趣味にはまったく惹かれなかったけど、
彼らの心の揺れや痛みには激しく共感したし、
世間から見れば異端者である彼らのことを
少しでも理解したいと思ったのも事実でした。


余韻を残すラストシーンの後
二人の関係がどうなるのかは想像するしかないのだけど、

生きにくい世界に絶望し心に傷を持った森野夜が、
紆余曲折の末、人間性を取り戻し、
こちら側の世界に戻ってきた駅の改札のシーンは
エモーショナルに胸を打ったし、
『僕』への報われない想いに気づいた
本当に名シーンであったと思います。

あとミステリーは騙されてナンボです。
見破ってやろうなんてヤボなこと考えずに(笑)
素直に物語を楽しむのが一番!


はっきり言って、グロいし、異常者しか出てこない暗い物語だけど、
小説は本来一人でコソコソと読むもので、
不良性があるからこそ惹かれるし、
タバコや酒などのように常習性があって体に悪くて、
だからこそ人を絶望から救えるのです。

僕は今でも、読書は基本『悪徳』だと思っているし、
学生時代から『毒』を摂取したくて本を読んでいた僕みたいな人にとっては、
本作が、心に効く劇薬となるのは間違いないと断言できます。


ライトノベルというジャンルを
一躍一般人にも分かるように提示した功績や、
後続のミステリーや漫画作品に
多大なる影響を与えたという意味でも
自信持ってオススメできる一冊です。
(ただし、心が弱ってる人は元気になってから!)


サクサク読める連作短編が好きな人、
どんでん返しな小説に飢えてる人、
ダークなミステリーやダークな青春小説が気になる人、
人間の暗黒部分に惹かれてしまう人、
少女小説、ゴス、ネクロフィリア、サイコパス、フェティシズム、ゴスロリファッションなどのキーワードにビビビと反応した人などに
特にオススメします!(笑)


https://youtu.be/ocjUZnArtuU

『GOTH』映画予告
なかなかいい雰囲気を持った映画でした。
森野夜をまだブレイク前の高梨臨、『僕』を本郷奏多が演じています。

レビュー投稿日
2019年3月4日
読了日
2019年3月4日
本棚登録日
2019年3月4日
2
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