少女七竈と七人の可愛そうな大人

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本棚登録 : 3274
レビュー : 665
著者 :
円軌道の外さん 小説   読み終わった 

詩的で切れ味鋭い
センチメンタルな文体。

思春期の女子特有の
匂いたつような濃密で閉鎖的な世界観と
男たちへの強烈な嫌悪感。

北国の和情緒あふれる情景描写や
古風な台詞、情念の世界。

そして切実で甘酸っぱい
未知なる恋の予感。



さすが桜庭さん。
この人の切ない感性は
ほんまツボ。

少女の痛みを書かせたら
彼女の右に出る者はいないですよね。


七竈が花の名前で
七回燃やしてやっと灰になることが
その由来であることなど、
恥ずかしながら
この小説で初めて知りました。




自分を変えるために、
こころのかたちを変えるために、
ふしだらな人間にならなければと決意し、
辻斬りのように
7人の男たちと体の関係を持った母・川村優奈。


そしてそんな母から
遺憾ながら
美しく生まれてしまった17歳の少女
川村七竈(ななかまど)。


黒い鉄の塊である鉄道模型を愛す七竈の
美しいがゆえの苦悩と
切なすぎる初恋を描いた
章ごとに語り手が変わる連作長編です。
(犬の視点もあるのですよ)


清々しいまでに自分の美貌には関心がなく、
鉄道オタで
『世界の車窓から』が好きで(笑)
男たちを毛嫌いする
七竈のキャラが抜群にいいですね。


田舎町において美しいということは
なんの価値もなく好奇の目にさらされ
妬まれるだけ。


七竈が唯一心を許す
幼なじみで
おそろしく美少年の
桂 雪風(かつらゆきかぜ)。


ゆっくりと惹かれ合う異形の二人。

しかし二人のかんばせは
時が経つに連れ
そっくりな風貌と化していき…



いわば漫画的設定だし、
極力感情描写を排除し
ドライに描いていながらも
登場人物たちの痛みが行間から滲み出て
一人一人に感情移入してしまうのは
やはり桜庭さんの実力なんでしょうね。
(二人が名前を呼び合うだけのシーンなのに切なさが零れ落ちるのです)


雪風に恋をする
おかっぱ頭の少女
緒方みすずや
七竈をむくむくと呼ぶ
元警察犬のビショップなど
脇キャラが魅力的なのも◎。



人は永遠の、
限りないものに憧れる。

でも、限りあるものほど、
愛おしく思えるもの。


美しさもまた然りなのかな。


日々がただ美しいうちに
時間よ止まれと願い続けた
悲しき少年と少女の軌跡。


いつまでもいつまでも余韻の残るラストも秀逸な
記憶に残る一冊です。

レビュー投稿日
2013年4月8日
読了日
2013年4月8日
本棚登録日
2013年4月8日
19
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