さようなら窓 (講談社文庫)

3.67
  • (23)
  • (31)
  • (31)
  • (7)
  • (3)
本棚登録 : 281
レビュー : 44
著者 :
円軌道の外さん 小説   読み終わった 

家を出て
ひょんなことから
ゆうちゃんの家に転がり込むことになった
きいちゃん。

一人暮らし歴が長く
ジャムだって作れる
美容師のゆうちゃん。

少し情緒不安定な
二十歳の女の子・きいちゃんと
困っている人をほっとけない
優し過ぎる青年・ゆうちゃんの
甘く切ない恋模様を描いた
連作短編集です。



ガソリンの匂いと共に食べた晩御飯の思い出、

長生きしたカブトムシの話、

アメリカ帰りの
優しいおばあさんの話、

不思議な転校生・サルコの話、

特撮会社の岩職人、
岩ちゃんの話、

身体が小さくなる病気を患った
先輩美容師ミリさんの話、

など
いつからか眠れなくなったきいちゃんのために
毎晩話してくれる
ゆうちゃんのちょっと不思議で
切ないお話の数々。


このひとつひとつの物語が
本当に面白くて
ついつい引き込まれていく。
(ゆうちゃんの語り口の上手さと
きいちゃんの素直な合いの手の妙!)



優しくはあるけれど
どこかドライで覚めた
ゆうちゃんの言葉と、

深い繋がりをいつも求めている
きいちゃんの想いとの
悲しい温度差。


ほんの僅かな
すれ違いから
次第にギクシャクしてくる二人の関係。


そこから自分の生活を見つめ直し、
ゆうちゃんに依存した
楽だけどふわふわしただけの場所から、

自分の足で歩いていこうと
もがき続けるきいちゃんの姿に
なんか共感してしまいました。


それにしても
切なさを内包した
キラキラとした言葉や、

本業が歌人である東さんだけに、
独特のリズムで進む文章が
妙に心地いい。


劇的な出来事なんてなくても
当たり前に揺れ動く小さな感情を、
壊れ物を扱うように繊細に積み重ねていく
小説に心惹かれます。

その意味でも
この小説はまさにツボで、
夢見るように儚くて
切なく胸に残る、
あたたかい文章に
一気にファンになってしまったくらい
そこに流れる空気感が好きなんです。



二人手を濃い紫色に染めての
ぶどうジャム作り。

二人の指で作った
ほどけない知恵の輪。

微笑ましい
ベッドの中のキツネ遊び。


好きな誰かと過ごす
永遠を感じるひととき。


独り身の人は
二人でいることの自由をうらやましく思うだろうし、

たった一人の理解者と
今を生きている人には
いろいろと参考になる恋愛小説だと思います。

レビュー投稿日
2012年4月19日
読了日
2012年4月19日
本棚登録日
2012年4月19日
4
ツイートする
このエントリーをはてなブックマークに追加

『さようなら窓 (講談社文庫)』のレビューをもっとみる

『さようなら窓 (講談社文庫)』のレビューへのコメント

まだコメントはありません。

コメントをする場合は、ログインしてください。

いいね!してくれた人

ツイートする