亜人ちゃんは語りたい(1) (ヤンマガKCスペシャル)

著者 :
  • 講談社 (2015年3月6日発売)
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感想 : 62
5

サキュバス、バンパイア、デュラハン、雪女など、
この世のどこかには必ずいると言われた
特別な性質を持つ人間を「亜人」と呼ぶ。
神話やおとぎ話のモチーフにもなっている亜人は
かつては迫害の歴史もあったが、
近年では差別もなくなり
彼らが持つ特別な能力も
一つの個性として認められるようになった。
(日常生活を営む上で不利な点を持つ亜人に対する生活保証制度も存在する)

そんな時代のお話…。


舞台はとある都市にある柴崎高等学校。
主人公はこの高校に来て4年目の生物教師、高橋鉄男。

彼は大学時代、亜人についての研究で卒業論文を執筆しようとしたが、当時はまだ世論がどうの倫理的にどうのという理由で許可が下りることはなかったという過去を持っている。

ある年の新学期、
いまでも亜人に興味津々な彼の前に
数学教師として亜人であるサキュバスの女性が赴任してきたからさぁ、大変!
ついに念願の亜人と会えたと思った矢先、
新しく新一年生になった生徒の中にも
次々と亜人たちが現れて…

というシュールでキュートな学園コメディ(笑)


いやいや、コレはスゴい漫画発見!
斬新な発想と瑞々しい感性。
キャラ立ちしまくった個性豊かな登場人物たち。
2015年5月度の「このマンガがすごい!」ランキング オトコ編で1位を獲得した実績も頷ける、
新人が描いたとは思えない完成度の高さやと思います。

モンスターや妖怪、人外が出てくる漫画やアニメは昔から存在していて、
古くは「妖怪人間ベム」「デビルマン」「うる星やつら」「うしおととら」、
最近では一世を風靡した「妖怪ウォッチ」、ネクストブレイク漫画の筆頭に挙げられる「魔法使いの嫁」、ケンタウロスの奥さんが登場する「竜の学校は山の上」、
アニメ化も決定した 「モンスター娘のいる日常」などまだまだあるけど、
その系統と比べても
またひと味違う斬新な個性が光ります。

キュートな女性キャラが沢山でてくるコメディでありながら
キャピキャピし過ぎずドタバタに走り過ぎることもない、
どこか抑制された質感が
クールで新しいし、僕個人にとってもそこがツボでした。
(扱っているテーマが異形の物である亜人なだけに、どこか哀しみを感じさせるのも一つの理由かも)


ではでは、個性豊かな亜人ちゃんたちを紹介。

いつも元気なムードメーカーで友達思いのバンパイアの亜人、
1年B組の小鳥遊(たかなし)ひかり。
(表紙の女の子です)

甘えんぼう体質で抜群のプロポーションを誇るが
気が弱く奥手な性格な
頭と胴体が分離したデュラハンの亜人、
1年B組の町 京子。

男子にモテモテのアイドル的風貌だが熱射病でいつも倒れてしまう
雪女の亜人、
1年A組の日下部 雪(くさかべ・ゆき)。

あえて女を封印し地味な身なりで男を遠ざけることことに日々神経を使う(泣)、
そばにいる人を淫らな気持ちにさせてしまう
サキュバス(淫魔)の亜人、
新任の数学教師、佐藤早紀絵。

などなど、傷つきやすく仲間思いで
恋に恋する亜人たちのキャラが
ホント素晴らしい出来。
(亜人であるがゆえに恋に臆病なそれぞれの心情が切ないのです)


小鳥遊が言う
「亜人という呼び方は古い!
女子高生や若いコの間ではデミって言うの!」
というセリフに込められた彼女たち亜人の心情。

自分たちを卑下したり特別視することなく凛として生きる
このセンスにしびれました(笑)


バンパイアといっても基本的には
国から月一パックで血が支給されていて
あとはトマトジュースとレバーを積極的に摂取すれば
のべつまくなしに人を襲ったりはしないらしいし(笑)
(でもたまに牙を刺して人の血を吸ってみたいと思うこともあるらしい笑)

遺伝ではなく突然変異で亜人となるため、
小鳥遊のように
同じ家族でも娘だけが亜人となる場合があって、
「家族用の冷蔵庫には血液パックを入れないで」と普通の人間である双子の妹に怒られたり(笑)
いろいろ苦労があるのです。
(生まれた時から白髪の娘を気遣い、自分の髪もワザと白くしている小鳥遊のお父さんのさり気ない優しさにもグッとくる)

世界に3人しかいないデュラハンの町 京子は
その性質上なにより孤独が嫌いなのだけど、
頭が本来あるべき場所から炎が吹き出し
いつも頭を手で抱えている特異な容姿のため、
クラスメートが引いてしまって
なかなか友達ができなかったり、
(そりゃ誰でも怖いわ!)

そばにいる人をすべて催淫(さいいん)してしまうサキュバスの能力を持つ数学教師の佐藤早紀絵が一番悲惨で(笑)、
性を想起させないよう常にダサいジャージなどの地味な身なりやふるまいをし、
集合住宅にも住めず
(人里離れた山奥に住んでます笑)、
通勤電車もラッシュ時は危険なので避け、終電や始発に乗らないといけなかったり、
(自制心の利かない睡眠時は他者にも淫靡な夢を見せてしまうので、どんなに疲れてても電車内での居眠りも厳禁!)
亜人たちが社会でまっとうに生きるのはホント大変なのです。

笑いの中に
そんな亜人として生きる上での苦悩も見え隠れして少し切なくもなるし、
読んでいるうちに
可愛いくも健気に生きる亜人たちを応援していきたくもなるんですよね。


これから雪女である日下部 雪の秘密が明かされるだろうし、
彼女たち亜人の不器用な恋模様も絡んでくるだろうし、
彼女たちが密かに思いを寄せる高橋鉄男の行動も気になるところ。

まだ1巻しか出てないので
キュンとして面白い漫画をお探しなら
絶対オススメです!

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 漫画
感想投稿日 : 2015年6月26日
読了日 : 2015年6月26日
本棚登録日 : 2015年6月26日

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