おしまいのデート

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本棚登録 : 2649
レビュー : 513
著者 :
円軌道の外さん 小説   読み終わった 

食べることが
生きることの基本だと言い続けてきた瀬尾さん。

彼女の小説は
自分にとって
「卵かけご飯」のようなものです。


シンプルなんだけど
何度でも
また食べたくなる。

ホッとひと息つける
素朴なあたたかさを
読むたびに味わえる作家の一人です。


そしてこの短編集でまず惹かれたのは、
卵かけご飯ならぬ
玉子丼を扱った
「ランクアップ丼」という話。


半熟の玉子がつやつやした
とろりと甘辛い旨味の玉子丼。


初老の教師である上じいと
母子家庭で育った
ちょっと不良な高校生、三好くんとの
玉子丼が繋ぐ
ぎこちなくもあったかい会話が
ホンマいい具合なのです。


世代も環境も立場も
すべて越えて
玉子丼で繋がる固い絆。

自分はそんないい先生とは巡り会えなかったけど、
上じいのような職場の上司に
何度も救われたことを思い出して
自然と目頭が熱くなりました(>_<)



他にも
女子中学生とじいちゃんとの
月イチのデート、

高校生の少年同士の
奇妙な初デート、

捨て犬をシェアする
少年とOLの
夕闇のデート、

新米保育士と園児の父親との
デートまでの道のりなどなど、

タイトル通り
様々なデートの模様が収められた本作。


デートに欠かせない
ワクワク感と共に
食事描写も楽しいのです。


デートの計画を立てるのに欠かせない
ソフトクリーム。


切なくしょっぱい
涙味の天丼。


寒空の下、
公園のベンチで食べる
手作りのおにぎり。


草むらの上で食べる酢豚とビスコと
甘ったるいコーラ。


ほら、
好きな人と食べる食事の
なんとも幸せな空気感が
少しは伝わってきたでしょ?(笑)



ファーストフードも
コンビニ弁当も
家族の食卓も
食事は食事。


だけど食事は
作った人がそばにいて、
目の前に同じものを食べてる人がいるだけで
味が格段に違って思える。


自分を育て
自分を救ってくれるのは
毎日の食事であり、

好きな誰かと過ごす
何気ないひとときであることを
この小説は無意識に教えてくれる。


恋も愛も年齢も性別もすべて越えた
人と人との逢瀬を描きながら、

あくまで人の心にフォーカスを当てた
優しい作りに感動する、
あったまるこな一冊です(^O^)

レビュー投稿日
2012年12月7日
読了日
2012年12月7日
本棚登録日
2012年12月7日
16
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『おしまいのデート』のレビューへのコメント

まろんさん (2012年12月10日)

丼もののごはんにじわっと滲みたおつゆみたいに
瀬尾さんらしさがにじみ出ている本ですよね♪

どれひとつとっても、ラブラブ♪な男女の普通のデートじゃないのだけれど
そして、どこか切ない「おしまい」のデートなのだけれど
でも、登場人物にとってはみんな新しい一歩につながる大切な経験になっていて
ほんとに「あったまるこ」な本でした(*'-')フフ♪

円軌道の外さん (2012年12月14日)


いつもたくさんコメント
ありがとうございます!

じわっと滲みたおつゆみたいって
いやぁ〜
まさに言い得て妙っスよね〜(笑)(^O^)


自分の中では
困った時の瀬尾さん頼みで(笑)

嫌な気分の時や
後味悪い小説を読んだ後なんかに
無性に読みたくなるのが
安心印の瀬尾さんなんスよね〜♪


まろんさんの言うように
普通じゃないデートばかりなんやけど、

瀬尾さんの眼差しがあたたかいから
どの人物にも共感できるし
物語に入り込んじゃうんです。


いろんなタイプの話を書ける作家もいいけど、
甲本ヒロトや
忌野清志郎や
ストーンズなんかのように

偉大なるワンパターンも
実は難しくて
スゴいことなんやって、
瀬尾さんの作品読んでても思うんスよね。


毎回あったかくて
心地いい読後感をくれる作家って
そうそういないと思うし(笑)

そういう意味でも
自分にとって
オンリーワンな作家が
瀬尾さんなんです(^_^)v


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