
夏の間に
どうしても読んでおきたかった一冊。
ひなげしを食べようと
あの手この手を使って騙そうとする悪魔と
本当の美しさを
ひなげしに説くひのきのやりとりが面白い
「ひのきとひなげし」、
花巻駅を舞台とした
なんともロマンチックな恋物語
「シグナルとシグナレス」、
歌うように軽快な文章で語られる
可哀想な象の話
「オツベルと象」、
人間社会を鋭く風刺した
「猫の事務所」、
楽団の中で一番下手だったセロ弾きの青年が
子猫やカッコウや子狸や野ねずみ親子の力で
仲間たちの信頼を得ていく
「セロ弾きのゴーシュ」、
そして孤独な少年が
死者たちと巡る銀河への旅を通して
生きる意味に気付いていく不朽の名作
「銀河鉄道の夜」などを収めた
珠玉の童話集です。
特に「銀河鉄道の夜」を再読して、
これほど痛切で
美しい物語だったのかと
この歳になって改めて感動しました。
賢治が持つ宗教観の色濃い
儚く深遠なストーリーと、
水素よりも透明な銀河の水、
サファイアやトパーズの河原、
りんごと薔薇の匂いがする風など
ロマンチックこの上ない比喩と
ファンタジックな世界観。
誰かのために命を賭けて死することが
人間にとって本当の幸いだという
賢治のメッセージ。
賢治の伝えたかった思いを理解した上で
あえて言葉を変えるなら、
自分は誰かのために
生きていきたい。
自分を救ってくれた愛する人のために、
自分を必要とする
誰かの声に応えるために
今を生きていたい。
夢から覚め
現実を生きていく決意をした
ジョバンニのように。
被災地の夜に読んだ
賢治の「雨ニモマケズ」のように。
悲しみを糧にして
強く気高く。
- レビュー投稿日
- 2013年8月18日
- 読了日
- 2013年8月18日
- 本棚登録日
- 2013年8月18日