ニシノユキヒコの恋と冒険 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2006年7月28日発売)
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5

ニシノさん、
西野君、
ユキヒコ、
幸彦、
西野くん、
ニシノ、

などなど、
呼ばれ方は違うけど、
様々な時代の
様々な歳の女性たちの
恋愛話の中から

ニシノユキヒコという
ひとりの男が見えてくる構成。

いやぁ〜
面白かったです(^_^)


どこか
「100万回生きたねこ」を連想したし、
(様々な女性たちのもとに現れては、結局誰も愛せない様は
真実の愛に気付く前の絵本の中のねこそのもの)

女性たちから見れば、
興味を惹かずにはいられない
野良猫のような人だと思いました。



甘い顔と清潔さと几帳面さと
全天候型の抑揚のない声

そして少しの冷気を併せ持った
ニシノユキヒコ。


クールに振る舞いながらも努力家で、

褒めたり甘えたり
叱ったり、
女性が望む様々なことを
いとも簡単に
またとないタイミングで
見事に叶えてあげられる技術を持つ。


誰かに愛されたいと願いながらも
いつも上の空という
掴みどころのない男。


いや、実際どうなんでしょう(笑)

世の女性たちは
ニシノユキヒコのような男性を
どう思ってるんやろ?

ちょっと聞いてみたい気がします(笑)



コレはニシノユキヒコの辿ってきた
中学時代から
50歳を過ぎ亡くなってしまうまでの恋愛遍歴を、
年代をシャッフルした
構成で並べた連作短編集です。



それにしても
過不足なく行き届いた
心地いい言葉、

それでいて高ぶらず品のある
川上弘美さんの文体は
この作品でも健在で、

上手いなぁ〜っと
思わずにはいられませんでした。
(ただ、川上作品の特徴であり、柔らかさを印象づけていた
心地よい食事の場面がほとんどなかったのは少し寂く感じたなぁ〜)


どうしようもないダメな男性の
恋と冒険を描きながらも

裏を返せば
実は凛とした
カッコいい女性の生き様を描いた
小説でもあるんですよね。



恋って
いい人だから好きになる、
大事にしてくれそうだから好きになるというものでもない。


どうしようもない人で
周りは反対するけど、


「でも好きやねんっ!!!」


って胸を張って言える瞬間は
誰にでもあるだろうし、


男でも女でも
誰の中にも
ニシノユキヒコ的なものは必ずあるのです。



しかし、歴代彼女が
俺のことを語った話を
もしまとめたらと思うと、

ああ〜っ怖〜っ!!!

です(≧∇≦)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2012年12月2日
読了日 : 2012年12月2日
本棚登録日 : 2012年12月2日

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