青年のための読書クラブ

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本棚登録 : 2226
レビュー : 410
著者 :
円軌道の外さん 小説   読み終わった 

親に捨てられ親戚中をたらい回しにされ施設に入った僕が
のちに音楽や文学や拳闘に出会い
耽溺していったのは
ごくごく自然で必然的な流れでした。
どこにいても必ず自分は黒い羊だと感じたし、
改めて何かから逸脱する必要もないくらい(笑)、
初めから逸脱した存在でした。
そんなバックボーンがあるからか、
とにかくアウトローやはみ出し者たちの話に僕は滅法弱い(笑)

本書はシスターのいるお嬢様学校が舞台なだけに
今ハマってるクドカンのドラマ「ごめんね青春!」を嫌でも思い出してしまう内容ではあるけど(笑)、
タイトルどうり
本好きにはたまらない宝石のような魅力に満ちた作品です。


東京は山の手にある伝統あるお嬢様学校「聖マリアナ学園」に晴れて入学した
長身でノーブルな美貌を持つ
高校一年の転校生、烏丸紅子(からすま・べにこ)。

コテコテの大阪出身で庶民中の庶民である紅子の出現によって、
ざわめきたつ良家の子女たち。
気弱な紅子は美しい容姿を持つものの、隠しきれない庶民臭によって
どこのクラブに行っても相手にしてもらえない。

サムワンな友達を求め彼女が最後にたどり着いたのは
旧校舎裏の崩れかけた赤煉瓦ビルに居を構える
異形の少女たちの部屋、
すなわち「読書クラブ」であった。
やがて部長である妹尾アザミを参謀とした読書クラブ部員たちによる
「紅子王子化計画」の幕が切って落とされる…。


本書は学園の創設(1919年)から消滅(2019年)までの100年にかけて続いた、
読書クラブの歴史と
様々な時代のクラブ員たちの活躍を綴った
壮大なる連作短編集です。

学園の正史に残らない珍事件を
読書クラブの面々が綴った暗黒のノートをもとに物語は進んでいくけど、
“校内の異端者だけが集う「読書クラブ」”という設定だけで
同じく異端者だった僕は俄然惹かれました。

まるでダウンタウンの薄汚れたパブのようにブルーカラーの気配を漂わせ、
生徒たちから忌み嫌われている読書クラブの逆襲が胸をすく。

ある時は学園の王子に君臨し、
ある時はロックスターに成り上がり、
ある時は亡命者を匿い、
ある時は「ブーゲンビリアの君」となり、
少女たちを助ける姿なき英雄と化す、
それぞれの時代に生きた
そんな異形の者たちの痛みや活躍を
時にシリアスに時にコミカルに
時には感傷的に
少女たちの冒険譚を見せてくれるのだから
はみ出し者であった人ほど
より共感できるストーリーなのです。


中でも秀逸だったのは冒頭にあらすじを書いた
第一章の「烏丸紅子恋愛事件」。

この女子ばかりの学園では、
恋愛はしたいが現実の男性には強い嫌悪感を抱くお嬢様な生徒たちのために 
安全で華やかなスター、
つまり毎年学園に一人、投票によ
って 「ニセの男」を作り
王子と呼んでいる制度があって、
それを利用し、紅子は成り上がっていきます。

髪を短くし、夜な夜なディスコやバーに出かけては
不良少年の仕草をリサーチし、
完成に近づいていく
「青年・烏丸紅子」のサクセスストーリーは拍手喝采もの。

しかしなんと言っても特筆すべきは
学園一の才媛だけど、
ゲスな親父がそのまま乙女の制服を着たような(笑)
小太りの醜い女生徒で
読書クラブ部長の高校二年生、
妹尾アザミ(せのお)のニヒリストキャラ!


自分の容姿にコンプレックスを抱き、
紅子をスターダムにのし上げることに全精力を注ぎ込む姿は哀切きわまりないし、
恋は人の容姿にするものか、
それとも、詩情にするものなのか?
というフランスの戯曲『シラノ・ド・ベルジュラック』をモチーフにしたテーマが
深く深く胸に突き刺さります( >_<)


他にもシェイクスピアの「マクベス」、
ホーソンの「緋文字」、
バロネス・オルツィの「紅はこべ」など様々な古典文学のストーリーをモチーフとして各話が構成されているのも巧みだし、
読書家にはたまらない仕掛けなんじゃないかな。
(読めば必ず元ネタが読みたくなります笑)

それにしてもどんなに孤独であっても
孤独を楽しみ、
読書を通じてかけがえのない仲間と老後を過ごす
読書クラブ員が本当にうらやましい。

たおやかで
か弱いだけではない 、
少女たちが持つ悪意の魅力と
内包する強さを描ききる桜庭さんのポテンシャルの高さにも
毎回脱帽します。


行儀のいい小説なんて
面白くない。

乙女よ(そして青年よ!)、永遠であれ。
どんな時も反骨精神を持って
常に逸脱した存在であれ。

世がどれだけ変わろうとも、
どぶ鼠の如く、走り続けよ。
いつか砂塵となって消えるその日まで…。


なおこの作品は全国の大学文芸サークルが
「この1年に最も輝いていた本」を決める2012年度の「大学読書人大賞」にも選出されています。

レビュー投稿日
2014年11月20日
読了日
2014年11月20日
本棚登録日
2014年11月20日
19
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『青年のための読書クラブ』のレビューへのコメント

kwosaさん (2014年11月22日)

円軌道の外さん

前々から気にはなっていたのですが、この『青年のための読書クラブ』
円軌道の外さんのレビューによって、僕の中で俄然輝きを放ち始めました。
「お嬢様学校」という閉鎖空間に置ける100年にわたるサーガ的物語に心引かれます。
なにかのインタビューで読んだのですが、桜庭一樹さんがこの小説を語る時に、バロネス・オルツィの『隅の老人の事件簿』を引き合いに出されていたのも気になりますね。

そういえば桜庭一樹さんも傾倒する、皆川博子著『倒立する塔の殺人』はお読みになりましたか?
あれも戦時下のミッションスクールが舞台で、格調高い耽美な物語に魅了されます。

円軌道の外さん (2015年4月14日)


わぁ~い、ここにもkwosaさん発見!(笑)
毎度毎度お返事遅くなってすいません!( >_<)

あははは(笑)
僕の暑苦しいレビューが何かの間違いだとしても
万が一お役に立てたなら嬉しいです!(笑)

そうなんです!何が面白いって
桜庭さんの作品は古今東西のミステリーのオマージュや名作を引き合いに出した遊び心が散りばめられているので、
kwosaさんのようなミステリー好きであればあるほど
ニヤリとできる所なんです(笑)
(筋金入りのミステリーマニアである桜庭さんだけに、僕のようなミステリー初心者はほとんど気付かないレベルだけど…)

kwosaさん御指摘の
『隅の老人の事件簿』も気になるなぁ~(‥;)

皆川博子さんはブクログでも読んでらっしゃる方が多くて、
こちらもめでたく
『読みたいリスト』入りしました!

はぁ~、1日が48時間くらいあれば 
もっと本が読めるのになぁ~(;゜д゜)



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