レッド・クイーン (ハーパーBOOKS)

3.61
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本棚登録 : 228
レビュー : 25
制作 : 田内志文 
円軌道の外さん 小説   読み終わった 

2015年に発売されるやいなや、
NYタイムズのベストセラーリスト初登場1位を獲得、
読者投票によって選出されるGoodreads Choice Awardsにおいては新人賞を受賞し、
すでに映画化も内定済みで、
全世界37カ国で刊行されるに至った話題作。

普段は話題作やベストセラーには興味がない僕だけど、
これは書店で行きずりの一目惚れ。
真っ赤な表紙の血を流す少女にまんまとヤラれたのだ(笑)

翻訳小説は訳者との相性もあるので
読むまでは不安だったが、
コレは冒頭からグイグイ引き込まれた。

それにしても、不確かな現実世界と比べ
この物語の強度よ。
海外の小説を読んで思うのは、
良作には半端ない熱量が込められた作品が多いということだ。
この小説も同じく。
心に食い込んでくる波動やエモーション、
小説の飛翔力が違うのだ。


優れた能力を持つ、支配階級『シルバー』が
力を持たない奴隷階級『レッド』を支配するとある国。
主人公は貧しい村で家族と暮らす17歳の少女メア。
ある日、メアは不思議な力に目覚める。
それは奴隷階級の『レッド』が決して持つはずのない、支配階級『シルバー』の力だったのだ。
メアは王家に直ちに捕らえられ、死を覚悟するが、
命と引き換えに名前と自由を奪われ、
“行方不明になっていたシルバーの王女”に仕立て上げられてしまう。
宮殿で待ち受ける謀略と裏切り、
冷酷な国王と魅力的な二人の王子。
奴隷として生まれた赤の女王、メアの運命は…。

というストーリー。

まぁ、要約すれば、
貧民街で育った少女が瞬く間に王子の婚約者となる
絵に描いたようなシンデレラストーリーなのだけど、
『シルバー』という特殊な能力を持った特権階級での生活が主となるだけに
アメコミばりの異能力を使ったバトルシーンがふんだんに織り込まれ、
ただのメロドラマでは終わらない。


言語による世界の更新という意味でいうと、
詩歌は破壊。
小説とは『世界の構築』だ。

この小説もまた、圧倒的なリアリティで
新しい世界そのものを描いている。

『レッド』という貧民たちが暮らす世界や
愛するものすべてから引き離され、
赤の他人に成り済ませと無理強いされ、
これから一生、嘘をつき続けて
『シルバー』の世界で生きなくてはいけないメアの気持ちを考えると
本当に胸が締めつけられる。
しかもシルバーの世界でメアの素性を知る者は限られていて、
バレることは即、死をあらわす。


人の頭に入り込み、考えを読み、
心を操ることができる能力を持つウィスパーや、
意志の力ひとつで、
建物全体を動かせる能力を持つテルキー、
固い石像を一撃のもとに破壊できる能力、ストロングアーム、
木々を意のままに操る能力、グリーンワーデン、
手に触れたものをなんでも爆破することができる能力、オブリビオンなど
異能力者たちの派手なバトルシーンとともに
レッドであるメアと
シルバーである上流階級との手に汗握る心理戦が
この小説のいちばんの読みどころだ。


テンポよく転がる予測不可能なストーリー、

どんな困難にも決してあきらめたりしない主人公の少女メアを筆頭に
冷酷な国王のタイベリアス・カロア六世、
人の心を読む能力を持つ王妃、エラーラ、
心優しき第二王子のメイヴンと
逞しく勇敢な第一王子のカル、
カルの花嫁候補で、なにかとメアを目の敵にする
エヴァンジェリン・セイモス、
そして、メアの歴史の教師で
唯一、『シルバー』の中で
彼女の心の友となる老紳士、ジュリアン・ジェイコスなど、
魅力的なキャラ設定と

徹底してディテールにこだわることで
嘘にリアリティを持たせた世界観、

『裏切りファンタジー』の名の通り、
誰が誰を裏切るのか分からない全編にみなぎる緊迫感、

そして、二人の王子の間で繊細に揺れ動くメアの心情や葛藤も丁寧に描かれていて、
ページをめくる手が止められない後半の怒涛の展開も含め、
新人が書いたとは思えない筆力にも脱帽する。
(映画好きや海外小説好きなら設定や世界観に見に覚えがあるかもだが、ひと括りにはできない魅力があるし、安易なハッピーエンドでは終わらないところに好感を持った)


ファンタジーは子供のものと侮るなかれ。
社会経験を積んで大人になればなるほど、
ファンタジー小説に含まれる
「苦み」を楽しめるようになる。

大人だからこそ堪能できる
虐げられた者の『痛み』と『裏切り』を描いたファンタジー、
読むべきは、僕たち大人なのだ。

レビュー投稿日
2019年3月4日
読了日
2019年3月4日
本棚登録日
2019年3月4日
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