日経新聞等で、何度も何度も広告を目にして、
そんなに推されたら、読むしかないじゃないか!
文庫本派なのに、我慢しきれず買ってしまいました。
文字通りの「奇蹟」の物語。
「秘密」と同じ匂いがするかな。
あり得ない現象から生まれる奇跡という点において。
それでもって、凝り方でいうと「秘密」の方が衝撃的だった。
東野作品は割と日にちをかけないと読めないものが多い中、
ライトに、さくっと読めてしまった。「流星の絆」以来の感覚。
ストレートな主張が前面に出ていて、
構成にしても過去の現在が交錯していることが分かれば、
後はある程度想定出来る、シンプルなものでしたから。
でも、軽いといっても、内容は濃密でした。
時空を超えている、という物語上の大嘘を忘れてみると、
「秘密」以上の感動がじわーっと広がってきました。
有川浩さんの「阪急電車」に似たものがあるのだけど。
つまり、自分の行動が自分の知らないところで、
誰かの役に立っていたり、
誰かの次の行動を決定付けていたり、
大胆な言い方をすれば、誰かの未来を変えていたり、
するかもしれない、想像を超えた力を持っているということ。
他人との関係が希薄になりがちだと言われる社会だからこそ、
「阪急電車」と合わせて、こういう作品は必要だと思います。
そして、もう一つのテーマは人生の「選択」「分岐」という点。
個人的には第四章、「黙祷はビートルズで」に痺れました。
何かを選ぶことは、同時に何かを捨てることになるわけで、
その喪失感は時に、選択した物事以上に心に残って、
哀愁、そんな調子でずっと居座り続けるものだと思う。
それが、強烈に上手い具合に表現されている章だと思う。
思うがままに綴ってきましたが、
何しろ、この「奇蹟」を共有させて貰えて、
東野さんに本当に感謝感謝、それに限ります。
- 感想投稿日 : 2012年9月10日
- 読了日 : 2012年8月19日
- 本棚登録日 : 2012年8月19日
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