この季節になると大戦に関するものを読みたくなる、と言うか、読まなければという気持ちをかき立てられる。戦争や原爆について考えよう、という声がかかるが、知らないと考えがおよばない。知れば自然と考える。だから、大戦について何か知りたくて、それが読むという行為につながっている。
前置きが長くなったが、本書の内容はそのタイトル通り、自分の妻を飛行機に乗せて飛んだ特攻兵の話。副題の「8・19満州、最後の特攻」からは、なぜ玉音放送の四日後?なぜ満州?という疑問がわくが、読み進めるとその謎の答えが分かる。歌舞伎役者のような凛々しい一人の文学青年が時代の波にのまれ、特攻兵として意を決し、その一方で一人の女性を愛し、その特攻機に共に乗った。特攻機に乗りこんだ二人の心境を思うと、胸が張り裂けそうだ。
ただ、本書は戦争さなかの愛情物語ではない。全六章のうちの二章を満州事変の記述に割いているように、史実を細かく描いている歴史書だ。しかし、史実を描き、時代をつづった歴史書だからこそ、あの時代を生きた二人の愛情の深さと辛さがじわりとあぶり出されてくる。
また、本編では機能していたワタシの涙腺の防御壁は「あとがき」で一部が崩壊した。最後の最後まで、大戦が残した爪あとにワタシは揺さぶられた。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
本・雑誌
- 感想投稿日 : 2018年11月18日
- 読了日 : 2013年8月8日
- 本棚登録日 : 2018年11月18日
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