自民党政治の終わり (ちくま新書 741)

著者 :
  • 筑摩書房 (2008年9月1日発売)
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感想 : 17
3

刺激的なタイトルになっているけれども、筆者が指摘
しているのは、自民党政権が終わるということでは
なくて、五十五年体制を支えてきた自民党システムに
よる政治が終焉を告げた、ということ。

"自民党システムへの反逆者"小沢一郎を取り上げた
第一章と、"救世主にして破壊者"の小泉純一郎を取り
上げた第二章では、自民党の政治がどのように変容して
きたかを論じていて、ここは筆者自身も指摘しているとおり、
ハードルが低く、読みやすい。
05年の郵政選挙での選挙での圧勝と、07年の参院選
での惨敗は表裏の事象だ、と説くところなどは説得力
十分で面白い。

第三章以降がこの本の本論とも言える部分。第一章、
第二章とはかなり色合いが変わって、分析的で専門的な
内容。
ハードルが一気に上がる。

第三章の冒頭で、筆者は自民党システムとはこういう
ものだと書いている。

 巨大かつ柔軟な党本部組織と膨大な後援会組織を
 通じて社会の隅々までネットワークを築き、ボトム・
 アップとコンセンサスを軸とする分権的色彩の強い
 政策決定システムと、年功に基づく平等な人事シス
 テムを組み込んだ組織原理を持ち、官僚機構との
 共生のメカニズムを通じて形成された巨大なイン
 サイダー政治の体系である。

第三章以降、特に第三章と第四章はこのようなトーンで
進むので、上の一文を読んで興味をかきたてらた…という
向きでないのであれば本書はあまりお薦めしない。

かく言う私も、読み進めるのはかなり難儀だった。
正直、何度も行き来しながら読んでいった。

ただ、そんな読書でも、読み終える頃には政治への興味
が以前より増していたのは間違いない。

二世議員がなぜ多いのかという疑問への答えや、次の
選挙で自民党が負けたら本格的分裂が起こるのでは
ないかという筆者の予言など、なるほどと思わせる箇所が
随所にあって、難儀であったものの、途中で投げ出す
気にはならなかった。

日本における政権交代や二大政党制を考える際に、非常に
参考になる一冊。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 本・雑誌
感想投稿日 : 2018年11月18日
読了日 : 2008年11月11日
本棚登録日 : 2018年11月18日

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