受が攻を監禁陵辱するという、定番とは逆パターンの設定。
センセは特殊世界を生きる男同士のハードな愛を得意としているので、こういった等身大のキャラが登場するストーリーだと、読者としては当然シビアな目線になってしまうのです。それだけ、期待が大きい作家さんなので。
でも、この作品のように普通の日常の中で突然暴走する恋心、というのはセンセの作品にしばしば登場するテーマです。ちょっと地味なわりに唐突だったりするので、始めは引きましたが書き下ろし2作込みでいい味わいになってたなと思います。切ない純情系。
表題作は、掲載時に改稿でびっち受から乙女受に変更した経緯があるようですが、私的にはどっちでも問題なし。多分、阿木はどんな態度で永瀬に迫っても、純情であることには変わらないと思うので。
へたくそで色気のないHも、痛いというよりは阿木のどうしようもない気持ちが前面に出ていて、一生懸命でかわいかった。
突っ込みどころはいろいろあるけど、長年親友として大切にされてきた相手に対して、恋心を持っている阿木の罪悪感と、それを暴露することによって失うとわかっている諦念が切なくじわっときました。
そんな阿木の気持ちをフォローする書き下ろし「この愛で守りたい」は、永瀬視点で、とてもいい話。というか、男同士の恋愛にありがちな壁をどう乗り越えるかが見どころ。ベタに永瀬の元カノが登場して、やきもきさせられます…
永瀬がほんとに阿木のことを大切に思っているのがひしひしと伝わってきて、しっかり愛を感じました。意地悪Hを楽しんでるのも永瀬が積極的に変化しているのがアリアリ。二人ともちょっと単純で大人げないところがあって、そこにきゅんとさせられます。
「この愛で誓いたい」は読者サービスと言っても過言ではない、親へのカミングアウト物語。ハートフルでほのぼの。読んでいて楽しい話でした。関西弁が何ともぴったり。雰囲気に合ってます。ほろりとさせられました…
どちらかというとかわいくてスイートな話で、センセのいつもの路線とは大幅に違うので途惑いもあります。出版社別に作品の色を使い分け?
でも、面白かったのは事実。やっぱり上手いです。
- 感想投稿日 : 2012年6月7日
- 読了日 : 2012年6月7日
- 本棚登録日 : 2012年6月7日
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