# 皆保険の原点と課題から見る、日本医療の歴史と課題

## 面白かったところ

* 我が国の国民皆保険制度の歴史がとても勉強になった

* 世界的に見ても医師は少なく、診療所や病院が多く、医療のスケールメリットが受けられていない点も合点がいった

## 微妙だったところ

* とくになし

## 感想

一向に安心できない日本の医療問題について、最前線の情報が知りたいと思って積んだ。この国の皆保険制度は戦後にルーツがあり、今もその意志が流れている。
よって皆保険であり、世界的に見ても安価でサービスが受けられる。

政府が医療費の削減を求める一方、本来投資されるべきカネが医療に投資されない事態が続いている。
薬価も医療費も安ければ安いほうがいいという方針の悪いところではあるが、薬開発の覇権獲得競争は他国と比べても大きく遅れを取っていることを知れた。
薬価が低いと利益も出ず、いろんなコストが高く付くから、皆やりたがらず市場に必要な薬が流れてこない。

いい風に言えば地域の医療に根ざして診療所や病院が多いことはいいが、スケールのでかい医療サービスが展開できないのは難しい問題である。
とはいえ日本人の特性上、小さく自前で商売するという感性から、統廃合をするのはなかなか難しいんだろうなという感想を抱いた。

時事の問題であり、紡がれた歴史を紐解いた気がして面白かった。

2025年4月24日

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読書状況 読み終わった [2025年4月23日]

# 初心者からソフトウェアエンジニアに成る。生成AIが開く新時代の胎動を聞いた

## 面白かったところ

* プログラミングをしたことのない令和の大学生の成長ストーリーが、どこか懐かしくてよかった

* 生成AIとの向き合い方について、物語調で段階的に把握できて大変勉強になった

## 微妙だったところ

* プログラミングを勉強していなかっただけで、成功する人間の片鱗が垣間見えて、ちょっと残念だった。

## 感想

生成AIはスマートフォン以来の革命だと思っている。
現に、たった100日でソフトウェアエンジニアリングの核心を掴むような人間が生まれた。

プログラミングとソフトウェアエンジニアリングという言葉は分けて使うようにしている。
米国だとソフトウェアエンジニアとして職に就くためには、コンピューターサイエンスを深く理解し、それなりの学位を修めなければならないものである。

> 「ライブラリってなんだか面倒だな。インポートしなきゃいけないし」

序盤に出てきたこのフレーズはまさにそうで、プログラマーっぽい印象を受ける。
動くものを作るだけであれば、1つのファイルにすべてのコードを書けば良い。
責務の分割や外部ライブラリの利用という考えも必要ないと思える。
駆け出しの頃、こういう疑問が浮かんだことを思い出して初心に帰ることができた。
クラス設計で悩むシーンも良かった。
クラスとインスタンスの違い、なかなか理解できなかった。

こういう読み物を通じて、この世界に飛び込んでくるジュニアたちの思考を改めて振り返ることは、意味があったと思う。

---

何がやばいって、このレベルまでほとんど生成AIと向き合っただけで到達している点だ。
著者自身に成功の才能があったことは脇に置いたとしても、書籍やセミナーなどにコストを払えないヒトでも自助努力でソフトウェアエンジニアになれる時代になった。

年齢も出自も関係ない。つまり、ただコードを書くだけだったら生成AIに任せれば良い時代がやってきてしまったのである。

自分の場合だと、ジュニアに対して生成AIのとの向き合い方を教えなければならず、生成AIとヒトの仕事の振り分けも考えないといけない。
このような葛藤の中で、何に投資をすべきなのか。という難しい問いを考える中で1つの参考になった。

またすごい波がやってきた。この本はジュニアに読ませたいと思う。

2025年3月7日

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読書状況 読み終わった [2025年3月7日]

# 「1年前の未来が今ここに」:生成AIの進化特異点をみた

## 面白かったところ

* AIの歴史が掻い摘んで書いてあること

* AIによる画像生成のロジック・拡散モデルが面白かった

* 本が世に出た時点では成されていたかった技術がもう現実にあった点。

## 微妙だったところ

* とくになし

## 感想

いよいよ生成AIに職を奪われそうになっている我々の業界にいるからこそ、さっさと読まねばと駆け足で読んだ。

2024年1月に初版のこの本に書かれていた内容が2025年3月現在、以下のフローが完成されてしまった。

1. 逐次的にコードの続きを提案してくれるシステム
2. 対話的にコードを生成してくれるシステム
3. 指示を出すと実行結果を含め、全部のコードを生成してくれるシステム

特に3つ目がすごい。こんなに時代は進んでしまうのかという特異点に自分は身を置いているのだと興奮した。

1年前には実現していなかったことが、いまある。

「知っていることを、説明できないことがある」という人間あるあるのポランニーのパラドクスは、学習させて確率に落とし込めばできそうな気がする。

「人間にとって簡単なことはAIにとって難しく、逆に人間にとって難しいことはAIにとって簡単」というモラベックのパラドクスにこそ、我々は向き合って考えないといけない分野なのだろう。

本当に仕事が奪われるのは大半のホワイトカラーであり、生成AIを手足のように使いこなせない人であり、抽象的な問題に取り組めない人なのだと改めて考えさせられた。

ただ、読むのが遅すぎたことが反省。生成AI関連の本はもっと早いものを読まねば。

2025年4月3日

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読書状況 読み終わった [2025年4月3日]

# ソフトウェアエンジニアリングで最も大切なことを、PHPを通じて学べる一冊

## 面白かったところ

* 開発環境構築に手間がかからないのは本当によい
* この一冊をマスタすれば、まずまずPHPの開発業務における天爾遠波は学べると思った
* PHPのシンタックスやフレームワークの使い方に留まらず、CI/CDないしはリファクタリングなど実際に仕事するうえで大切な概念まで学べる点

## 微妙だったところ

- 「ボブおじさん」という通称がサラッと使われていたが、書籍なので正式名称を呼称したほうが敬意を払ってる感があって良かったのではと思った。

## 感想

プログラミング言語は、言語標準のライブラリや関数の説明をしたところで「公式ドキュメントが正しい」になってしまう。

敢えて書籍で説明しなくとも無料のブログや生成AIに教えを請う事ができるから、本当に執筆が大変だったと思う。

だからこそ現場で必要とされる叡智の集合というテーマは切り離せなかっただろうし、現場で培った先人の知恵みたいな概念が書かれていて本当に良かった。

自分は特に、Section. 12-04の「コードレビュー」の話が最も良かった。コード技術の話ではないんだけど、レビューにより合意を取るためのプロセスや姿勢は、チームで仕事をするうえで多くの人間がぶつかる壁だろう。

* 変更はチームのものであること
* 質問を歓迎し、誠実に説明する心構えを持つこと
* 経験が浅いことを言い訳にしないこと

自分も学ぶことが多くあった。

PHPのことを復習するつもりで読んだこの本は、他の言語で飯を食っている戦友たちにも布教したい一冊である。

2025年2月11日

読書状況 読み終わった [2025年2月11日]

# 不可逆な視界——「見える世界」に縛られている私たち

## 面白かったところ

* 目の見えないヒトを何人もヒアリング・同行している生の体験が文章経由でリアルに感じ取れること。
* 「道から自由」という言葉が含蓄あるなあと感慨深かった。

## 微妙だったところ

特になし

## 感想

きっかけはWebアクセシビリティ対応の仕事に取り組み始めたことにある。
Mac OS準拠のVoiceOverを使って雰囲気でテストしていたが、このしごとは本当に届くべきヒトに届いているのかわからなかった。
自分は目の見えないヒトの友人がいないから、まず文章にあたろうと思ってこの本を取った。

本書の中では様々な視点から目が見えるヒトの風刺があって、たいへん刺激に満ち溢れている。特に「目の見えないヒトは道から自由」という言葉と「目が見えているヒトも盲目」という表現がぶっ刺さった。

「道から自由」という言葉は、進撃の巨人のラストの解釈と似ていてハッとさせられた。縛られるのが嫌で自由になろうと藻掻き苦しんでいたエレンは、実は自由に縛られたという残酷な真実。「目が見えているヒトも盲目」という言葉日も通ずるが、道が見えている時点で、道を知らなかった世界線にはもう戻れない。不可逆。その点、目が見える我々は道から不自由である。だからどうということはないが、このレベルの視座の考え方を得られたのは大変面白かった。

生まれたばかりの子どもは目が見えているが、母親という存在以外はよくわからない。赤ん坊と母親の境界が曖昧で、母親のことを自分の体の延長とさえ解釈している。だからこそ、世界を目で見て「自分」と「自分以外」の境界を作っていく作業が大切。改めて言語化されるととても面白かった。

一つ上の視座を得られる一冊。

2025年2月16日

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読書状況 読み終わった [2025年2月16日]

# 農家を志す前に読んでおきたい一般教養書

## 面白かったところ

- 果樹や葉野菜、二毛作っぽい動きなど、農業にもビジネスモデルが様々あったこと

- 農協と農家の関わりが少し見えて、儲かっている農家は農協をうまいこと使ってるんだなと知れたこと

## 微妙だったところ

- 特になし

## 感想

「農業とはなにか」。と聞かれたら「野菜を作ること」と答えてたんだろうなと読了してから思った。

実際は、「農作物を科学的に栽培し、商いをすること」が真であるなあと。趣味の農業と仕事の農業は全く考え方が違う。自然はコントロールできないことであるが、できるだけ数字に落とし込めるように記録を残し、確率で考えるようにリスクを見積もる。

こうした長い努力の果てに再現性を高め、作業のバラツキ・標準偏差を下げていく。ここまで来るとヒトのレバレッジを使う農家が出てきたりする。

美味しい農作物を作ることが好きだから農家をやっているのは間違いないとして、数字と向き合えないと農業経営はやっていけないという残酷な現実が見えた。もちろん、相対的に強み・弱みの分析をやった上で、負ける戦を決めることもやらないといけない。ほしい利益を見積もって、経費計算・見積もりをする。驚くくらい普通の経営感覚が必要。

そう。ただの事業経営。

一番眼から鱗だったのは、農家向けのホームページ制作を専門にやっている会社が紹介してあったこと。筋が良さそうだと嫉妬した。

農業系の本もまた読みたい。

2024年12月19日

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読書状況 読み終わった [2024年12月19日]

# 洗濯にも科学的な技術が存在し、ドラム式洗濯機はその対極の存在である 

## 読んだ本

[イシューからはじめよ――知的生産の「シンプルな本質」 by 安宅和人](https://amzn.to/402GC9O)

## 面白かったところ

- 洗濯にも技術がある。しかも日本は縦型洗濯機がいいらしいという知見

- 汚れを落とす、適切に乾かすために解くべき問題に対してのアプローチが様々

- 全自動が最適解ではないことの衝撃

## 微妙だったところ

- 特になし

## 感想

洗濯なんて洗濯機を回して干せばOKって思ってたけどそうじゃないらしい。
よく考えてみればわかるんだが、一子相伝の謎の洗濯技術は怪しさ満点である。
ふわっとした、かーさん・ばーちゃんのノリで紡がれた手法に過ぎない。

汚れを浮かすのは泡だから、プレウォッシュしたほうがいい。
汚れを洗い落とすのは水だから、水量は多いほうがいい。
乾かすためには温度と湿度が管理された空間のほうがいいから、狭い部屋で行ったほうがいい。
仕上がり柔らかさを担保するためには、脱水の時間を調整するほうがよい。

となると柔軟剤は必要ではなくなり、洗濯乾燥メニューも必要なくなる。一歩上の仕上がりは、衣類によって技術を使える縦型ドラム式洗濯機が優勢となる。

めちゃくちゃおもしろいとなっているが、果たして洗濯にかけるコストがどれだけあるのかと言うのが昨今の課題である。

`完璧な仕上がりの衣服`vs`洗濯乾燥機にぶち込んだ衣服`

これはいつか検証してみたい試み。

2025年1月21日

読書状況 読み終わった [2025年1月21日]

# 運を手で掴むような、ふわっとしていて、でも確かな利他の話

## 面白かったところ

- 「gift」に「贈り物」と「毒」という概念があり面白かった

- 贈与と与格の考え方と、時間軸を交えた偶然と必然の関係性が面白い

## 微妙だったところ

- 抽象的、空想的な例が多かった点

## 感想

歴史的名著『利己的な遺伝子』が代表されるように、利己という言葉はシンプルでわかりやすい。自分の、自分による、自分の利益をはかる行為である。

では利他とはなにか?本当に他が為に、己の下心無しではかる行為とは存在するのか?そんな疑問を抱きつつ、文字を追い進めた。

つまるところ利他とは、「他から与えられたものでありながら、時間経過とともに機能するもの」という感想を抱いた。

これはまさにジョジョ8部『ジョジョリオン』で最も重要な概念「決してこちらから追うことはできない。追わせるのは良い」というシーンと似ているなと感慨深くなった。

こちらから望み、支配や所有・統御にまで及んでしまったものは明らかに「利己」である。そうじゃなくて、どこかのタイミングで現れたものや気づきたときに、掴み取ったり拾い上げたりすることを「利他」というのだろう。

少なからず自分にもそのような体験があった。こうしてわかりやすく言語化されて文字面で対面することにとてもありがたく思う。

一歩間違えばやばい思想なのかもしれんないが、ヤバいかどうかはビブリオバトルでもして確かめてみることにする。

2024年10月14日

読書状況 読み終わった [2024年10月14日]

# その問題をどう解くか。解き方合ってる?と自問できるようになる一冊

## 面白かったところ

- 「問題を解く前に一呼吸置く」という考えが授けられる点が面白い

- データを視覚化する際のコツがとても良かった

## 微妙だったところ

- 特になし

## 感想

ほとんどの生き物は「明日生きながらえる」という目的のために、きょうび一日使って明日分の食料を探すためにエネルギーを探す。

人間は「明日以降を、半永久的に生きながらえる」ために稲作などの食料保存の歴史を紡いできた。

こんな比喩はいくらでも出てくるだろうが、解くべき問題とはなにかを考えさせてくれる本としてはかなりわかりやすい。

明日の食糧自給の話でいうと、明日がゴールなのか、半永久的な未来から見て点としての明日なのかでは解くべき対象が異なり、取るべきアプローチも変わってくる。そういうことである。

対象が大きいほど分割の自由が効くし、気付いたときには小さな問題が解決されていた場合もある。

耳と耳の間にあるものを使って、解くべき対象の大きさや順序、時には負ける戦術も駆使して、生き馬の目を抜くこの資本主義社会を生きていきたいと改めて思う。

2025年1月6日

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読書状況 読み終わった [2025年1月6日]

# 素人から玄人まで裾野が広い、技術職向けの自己啓発本

## 面白かったところ

* 仕事人として、職人として必要な考えや骨太な哲学がサラッと読み込める点。

* 引用されている、約されている言葉の感じがイイ。

## 微妙だったところ

- 原著からそうかもしれないが、直接的な言い回しじゃなくて否定が入りがちな表現が多く読みづらさはある。

## 感想

日本の得意とする徒弟制度とは違い、中世の専門技能モデルを題材にした一冊。

アプレンティス、ジャーニーマン、熟練職人という3つの言葉はあるが、この3つの言葉はそれほど意味を成さないのだろうという感想。

「無知をさらけ出す」ことや「白帯」「カップを空にする」という言葉の奥に広がる哲学を積み重ね、理解を深めていく過程こそに意味があると解釈した。

「今よりもっと良いものを、早く作るために必要なマインドセット」や「Craft over Art(芸術より技芸)」などの概念は、昨今のアジャイル・スクラムの価値観と通づる物があって、今読んでも遜色ない。

新しいものと向き合うときは、無知をさらけ出す気持ちで、白帯を締めて、コップを空にするように心がけたい。初心に帰ったような、気持ちになれる一冊。

2025年2月1日

読書状況 読み終わった [2025年2月1日]

# 若者に向けた、資本主義社会を駆け抜けるための羅針盤

## 面白かったところ

- 昭和・平成・令和という変遷を見たうえでの金融資産の取り扱い方と攻略方法が書かれていてよい

- 経済評論家とは思えない、男社会を生き抜くための小技がふんだんに書かれていて面白い

- 最後に書かれた御子息様へ宛てた文章が、ずば抜けて素晴らしい

## 微妙だったところ

- 特になし

## 感想

経済評論家としてではなく、物書きとしての山崎元さんが好きだった。だからこそ最後の一冊を手に取ったわけだが、なかなかに良いことが書いてあった。

今際の際の著書なのでガン保険のコストとリスクに関する話題が多いのかと見当していたが全くそんなことなかった。

むしろ本当に御子息様に向けられた本で大変読みやすかった。フォントや行間のスペースまで気を配られており誰でも読みやすいだろう。

現金としての金融資産を必要最低限+αを預金し、あとは全世界インデックスに回す投資手法は間違いなく外さない基本の形だと読んでいて思った。

そして、報酬としては現金ではなく株式型のほうが跳ね方が違うというのも腑に落ちた。現金で受け取らないことのリスクとしては、せいぜい自分が差し出した労働力が無に帰す程度だろう。コストも自分の労働力、もしくは投資してもいいだけの余剰資金である。上場ゴールを目指している会社に、少しの現金とストックオプションを報酬としてもらう働き方は、経営者だけじゃなくてもできるサバイバル術だ。

だからといって、金が必ずしも人生の豊かさと紐づくとは限らないとも明言しており、抜け目がないなと敬服擂るばかりであった。

本当に最後の手紙は素晴らしいものであった。

2024年7月31日

読書状況 読み終わった [2024年7月30日]

# 銀行マンとして生き抜くためのTipsとその生態系

## 面白かったところ

- 別の世界線で自分が歩むかもしれなかった、世界が文章を通して想像できて良かった

- 「世界を変えられないから、自分を、周りを小さく変えていく」という実にミニマムな思考がとても勉強になった

- 不機嫌おじさんの生存戦略がとても面白かった

## 微妙だったところ

- 特になし

## 感想

リアル過ぎる銀行の中の人の話。特に面白かった内容が2つあって、一つが不機嫌おじさんの生存戦略。不機嫌な人の周りは、この不機嫌おじさんの所為で不利益を被っているが、当の本人にはどんなメリットが有るのか?

それは、「不機嫌であるからこそ周りから配慮される利益を享受している」点だという。なるほど。自分が不機嫌であることに掛かるコストは低くて周りが気を遣ってくれるメリットは確かにある。この不機嫌戦略が罷り通るのは、終身雇用の慣習があるからだと著者は主張していて、完全に理解した。

自分が働いている職場にこんな面倒な人はいないし、居たとしたらすぐに追放されるだろう。それは人材の流通が激しい業界であり、本当に実力のある人が評価される世界だからだろう。不機嫌でいられるのは、会社が不機嫌マンに給与を支払ってくれる環境に問題があると言わざるを得ないだろう。

もう一つは、「自己成長としての胡麻擂り戦略」である。たまに接触する上司に対して、やけに胡麻擂りをする人間は存在する。彼らをよく思わない人も多々いるだろうが、胡麻擂りにも道があるそうだ。
胡麻擂りをするには、胡麻を選ぶ必要があり、胡麻を擂る技術が必要だ。上司に対してどんな話(胡麻)をして、自分が使える人間だとどのように説明するか(擂る技術)が求められる。まともな上司は胡麻擂りを通じて、数字以外の営業マンとしての力を測ることができるのだろう。

銀行の中の人ということもあるのだろうが、みんながしない競争を独占市場で行うという視点でみるとかなり優位な戦いと言える。

自分と無縁な本にこそ、このような回り回って使えそうな手練手管が詰まっていて大変勉強になる。

2024年7月30日

読書状況 読み終わった [2024年7月30日]

# 売上以外を売り上げる、脱帽の戦略

## 面白かったところ

- 売上を捨てて、上質なサービスを追求する選択と集中の戦略が気持ちよかった

- 「会社は明日の責任を、従業員は今日の責任を」というフレーズが明瞭でとてもいい

## 微妙だったところ

- 飲食店だけが売上の柱ではないという点が少し残念だった

## 感想

資本主義社会の根幹を成す「売上」を捨てる。経営の第一目標を捨ててまで何を追い求めるのか。

そんな思いで本を手に取ったが、本当に諦めたのは売上だけだった。
裏を返せば売上以外は捨てていないわけで、ちゃんとマーケットインの市場調査や他社は真似できない商品価値向上のテクニックを惜しみなく本に書いてあったのは自信の現れだと思った。

原価率をとことん向上させるために精肉は使わないとか、一日100杯売り上げるために不断の努力を注いでいる詳細などはとても勉強になった。

売上以外で追求するものって、考えてみると業種やその会社の色・思想がとことん出るものだから、個人的にはめちゃくちゃ好きなカテゴリだったためスラスラ読めた。

ただ、社長が矢面に立って宣伝媒体になったり、店舗の母体である会社の売上は不動産収益も参入しているという事実は再現性の難しさを感じた。

一方で、特別な人間を採用しない戦略や、誰でもできるような仕組みづくりは飲食店ならではのTipsで面白かった。

2024年5月13日

読書状況 読み終わった [2024年5月13日]

# 疲れとは、何なのか。完全に理解できる一冊

## 面白かったところ

- 「疲れるとヘルペスが出る」→「疲労感を計測できる」という発想の転換がシビれた

- 疲労と疲労感が違うという、当たり前そうで実は全く異なるものを改めて知れた点

## 微妙だったところ

- 著者がお医者様という事もあって、新書なのに専門性が高く、精読できなかった点

## 感想

自分の中で、疲労を感覚的にフィードバックされたものが疲労感という解釈をした。運動会の次の日は、筋肉が炎症を起こすことで筋肉痛というフィードバックが存在する。こんな感じである。
この概念を抽象化すると、「疲労」と「疲労感」という解釈に繋がる。そしてこの疲労感は様々なものによって濁される。

所謂、強度のストレスやカフェイン、リ◯ビタンDなどの飲料剤。そしてワーカホリック的なフロー状態である。その疲労を回復するためには、直接的な回復方法である睡眠はもちろんのこと、回復力を向上させるための軽い運動があると良いそうだ。

確かに、30分程度散歩したところで次の日に疲労が残る人はそうそういないだろう。散歩による疲労の蓄積が向上された疲労回復力によって補われたと考えるととても良い。

自分がもし、医学に興味を持つことがあったら、また読みたい一冊。

2024年7月30日

読書状況 読み終わった [2024年7月30日]

# 社会問題と照らし合わせると面白かった一冊

## 面白かったところ

- 愛着障害は自然治癒はせず、大人になっても寛解していない人がいるという発見

## 微妙だったところ

- 題材に使われている人が殆ど文豪で、偏っていた点

- 新書のわりに300ページくらいあって長い

## 感想

幼い頃に愛着活動が満たされた人は人を信用することができるし、人との距離感を適度に保てる。

愛着活動を行える安全基地があるから、果敢に挑戦ができる。

ベビーシッターや保育所・幼稚園でさえも乳幼児を預けることができるこの時代において、経済的合理性を考えたら外注した方が精神的には楽になれる。

だがたった生後半年から一年半の間で、取り返しのつかないような禍根を残す可能性があるなんて理屈では知らなかった。

他人との距離感に、大人になっても悩む人や自分自身の生い立ちを振り返るにもいい一冊。

2023年11月15日

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読書状況 読み終わった [2023年11月15日]

# 国と税金の関係から除く、文明の栄枯盛衰

## 面白かったところ

* 古代文明における帝国が滅びる理由の一つを知れること
* 富豪と貧民のバランスが崩れると国が潰える
* 賢い人ほど、税金のことを考えている

## 微妙だったところ

* 世界史のはずなのに、引用が分かりづらく信憑性に欠ける
* ビートルズから古代文明まで、世界史の規模感の統一感がない

## 感想

この書にかかれていることがすべて事実だと仮定すると、時代を問わずカネを稼いでいるヒト(法人も含む)ほど税金対策をして戦っている事がわかった。

GAFAを始めとする外資系企業だけでなく、日経の大企業もおそらく対策を講じているだろう。

こういう切り口で世界史の窓を覗くことは、とてもおもしろかった。

2023年10月14日

読書状況 読み終わった [2020年7月7日]

# AWSでサーバレスアプリケーション構築を始めるならこの一冊

## 面白かったところ

- lambdaを主軸としつつも、IAMやS3、API GatewayなどのAWSのサービスを利用して、現場で使われていそうな構成のアプリケーション構築が学べる点

- 写経する技術書ではあるが、殆どはAWSのブラウザ操作で学べる点

## 微妙だったところ

- 特に、yamlファイルの写経・記述量が結構多くて、実践の進捗が悪いこと
- `cfn-lint` あたりのlinterをいれてエディタで記述しないと、所見だとフォーマットエラーで詰まる
- 切実にサンプルコードが欲しかった
- エラーを読み解いたり、ログを読んでデバッグする最低限の問題解決力がないと読み進められない点

2023年10月14日

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読書状況 読み終わった [2022年11月29日]

# PHPで書かれた極めて素晴らしい設計の技術書

## 面白かったところ

- 想定読者が中級者向けの設計本に関わらず採用言語がPHPで、絶妙に痒い所に手が届かない感じが味わえるところ

- クリーンアーキテクチャからドメイン駆動設計、テスト駆動開発まで幅広く `PHP` で学べる点

## 微妙だったところ

- サンプルコードをコピー&ペーストできるリポジトリがなかったところ

## 感想

初心者、入門者用PHPの技術書やフレームワークの専門書は夜にあふれているが、設計に関する本はなかなかない。

他の言語で上梓された設計本を手にとって自分なりにPHPで写経したことは今までで何度もあったけれど、1つの答えとして当本を手に取れたことはとても良かった。

デザインパターン周りはイマイチ頭に残っていないので、また必要になったら開きたい。

2023年10月14日

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読書状況 読み終わった [2023年4月18日]

# 多方面からプロダクトに立ち向かうための、戦略的組織論

## 面白かったところ

- 組織とソフトウェアアーキテクチャは密接に関わり合っており、人こそがソフトウェアであり組織を良くも悪くもすることがわかった
- 自分が管轄外のプロダクトには適切な境界線(interface)を切って、異なる概念を持ち込まない・持ち込ませない制約があるとイイことを改めて学べた点

## 微妙だったところ

- 引用がとても多く、著者自身の熱い思いがあまりなかった点。チームトポロジーのフレームワークはすごいしやってみる価値はあるんだけど、イマイチ引き込まれれる何かがなかった。

## 感想

現場での課題図書として上がっていた一冊。なにもないところから著者の真意を汲み取ることは難しいだろうなとは思いつつ、現場での組織構成を擬えて見るとかなりイメージが進んだ。

人間一人の認知負荷にも限界があり、チームのそれにも限界がある。この前提を踏まえたうえで、自チームで担当すること・しないことのドメイン境界を切ってinterfaceでハーネスをかける。

「〇〇チームは▲▲機能の担当」という境界を Package by Featureで区切る。多機能とやり取りするときは必ずInterfaceを切って、他チームとコミュニケーションを図る。

なるほど。今やっている僕らの軌跡はこの本からやってきたんだと腑に落ちた。

2023年12月23日

読書状況 読み終わった [2023年12月23日]

# ナウなフロントエンドのテストの基本が学べる一冊

## 面白かったところ

- reactの方のアプリケーションは、キツめのlintルールやStorybookへのコンポーネント切り出しがしやすかった点

- アサーション関数やモックのテクニックなど、公式ドキュメントとは別の角度で書かれていたのは親切だと思った

- Storybookのplay関数にインタラクションテストを移す際、様々なテクニックが必要で面白かった

## 微妙だったところ

- next.jsのアプリケーションの型解決が難しかった

## 感想

現実問題、テストするかどうかとは別の問題で、テストができるような設計でコードを書ける技術が求められている。

テストは永久に必要かどうかはさておき、書けたほうがエンジニアとして前線に立てる説はかなり濃厚である。そんなフロント何もわからんエンジニアに投げられた一冊としては、申し分ないクオリティかと思う。

JestだろうがVitestだろうが、Storybookのインタラクションテストだろうが、検証・担保したいものの書き方や考え方はそこまで変わらない。

だからこそこの本を踏み台にして、該当のコンポーネントで担保すべき価値を考えながら写経することはとても意味があると振り返る。

ただ、next.jsのアプリケーションの型パズル解決とE2Eのメンテナンスがめんどくさすぎて途中で放棄した。

気が向いたら、フロントの型パズル力もあげたい。

2024年4月2日

読書状況 読み終わった [2024年4月2日]

# 遅読の呪縛に、「フロー・リーディング」の救済を

## 面白かったところ

- 実際にフローリーディングを当書で試せること

## 微妙だったところ

特になし

## 感想

会社の同僚推薦の一冊。

自分もかなりの遅読家で、一言一句舐め回すように、良いフレーズを自分の魂に鎮めるように本を読むタイプである。

だからこそ、スマホでニュースを眺める感じで本を読むスタイルは衝撃的だった。

実際に当書も1時間程度で読みきった。

率直な感想としては、一冊を読み切ったほうが全体の纏まりを掴んで主旨を捉えられるため、より筆者が伝えたいことを理解できると思った。

積読が減らなくて困っていたから、本当に救済された気分だ。

2024年2月13日

読書状況 読み終わった [2023年10月14日]

# 積読とは世界に一つだけのブックマーク群であり、情報テリトリーである

## 面白かったところ

- 積読の期限や歴史、名著からの引用を元にした論理展開は凄まじかった

## 微妙だったところ

- 各章の話の飛び方が尋常じゃなく、例えも高尚なものばかりで小難しい

- 積読に対するとてもわかり易い、後ろめたい感情の1つが「身銭を切って購入したものだから」というものがあると思うが、論及がなかった点

## 感想

「情報の濁流」という表現をなされていたように、我々は堰が切られた直後の流れような時代を生きている。

情報の良し悪しを選別し、自分だけの確かな情報リソース群(ビオトープ)を作成・管理することを推奨していおり、特に『タイミングが来るまで「積む」』という考えは完全に同意した。

個人的な見解として、本は情報の詳細であり、本棚はデータベースである。脳はインデックスの役割を果たす。故に、興味があって積んである本もすでに、データベースやインデックスとしての役割を果たしている。

本当に必要になったタイミングでその書物を手に取り、必要度合いに合わせて読書のレベルを上げていく。

積読が完全な読書かはわからないが、必要なタイミングで質の高い情報にアクセスを保有している状態を作る意見に対しては大賛成である。

2023年10月14日

読書状況 読み終わった [2022年8月30日]

# 人とカネとの向き合い方におけるマインドセット学習

## 面白かったところ

- カネの、モノと交換する機能以外に焦点を充てた抽象的な解説が、特に噛み砕かれていて読みやすい

- カネを通じて人生を見つめる考え方の基本を、幾つもの例を挙げて解説されていてわかりやすかった

- 筆者が好きな言葉が刺さる

## 微妙だったところ

- ある程度の大人にとってはごく当たり前の内容であること

## 感想

この一冊ですら、著者の「おれがかんがえたさいきょうの資産運用戦略」でしかない。

ぶっちゃけこの本を読まなくてもこの本の内容を網羅できると思うが、改めて読むことで色々と振り返ることができた。

・カネで買えること、買えないことが世の中には存在すること

・ローンを組むことは理詰に考えて数字的には正しいことでも、各々の人生においては必ずしも正解とは限らないこと

・サンクコストは、未来の自分を過去の自分の囚人にしてしまうこと

・重要なものを守ろうとする時、人は何でも信じようとすること

本で伝えたいことよりも、本に書かれている何気ないフレーズや一節が素敵な一冊だった

2023年10月14日

ネタバレ
読書状況 読み終わった [2022年10月17日]

# 政府・日銀・民草の我々がどのようにマクロ経済を作り出しているか、学べる一冊

## 面白かったところ

- 「物価は地震に似ている」という破天荒な発見と、その裏打ちされた説得
- 財務省や日本銀行が行っているオペレーションの目的が改めて知れる点

## 微妙だったところ

特になし

## 感想

個人的に2022年に読んだ本の中で最も驚きが多かった一冊。読みやすくて面白かった。

「地震と物価のグラフや性質が似ている」なんて突拍子もないアイデアがまず面白い。

地震は頻度・規模が記録され、物価は価格更新が行われた回数(頻度)・価格変動の幅(規模)が記録される。地震は本震から時間が経つにつれて余震の感覚が開き、物価も新品として市場にが出た時からは頻繁に価格が上がったり下がったりする。

地震と言ったらあまりいいイメージではないが、急に、大きく崩してはいけない物価を見る新たな物差しとして使われることになるとは想定外である。

メニューコスト仮説により、まるで談合されたかのように市場価格が動かないことや、弁当の嵩増しから見るインフレなど、割と身の回りのトピックもソフトに取り上げている点も、読んでいて好感を抱いた点のひとつである。

また著者の別の本も読みたい。

2023年10月14日

ネタバレ
読書状況 読み終わった [2022年11月29日]
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