1973年のピンボール (講談社文庫)

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本棚登録 : 1818
レビュー : 155
著者 :
抽斗さん どこかにあると、まだ信じてる   読み終わった 

「風の歌を聴け」の続編に当たる作品らしいし、実際前作を読んでいないと意味がわからない。そのはずなのだが、全くの別物として読んだほうが、むしろ読みやすいかもしれないとも思う。

私は前作を「時がとまったみたい」と評したが、こちらは前作で吹いていたいたその風さえ、止まってしまったようだ。
季節は秋から冬へ。
軽やかな憂鬱は、凍える倦怠へ。

前作より抽象の世界へ入った本作では、「僕」も「鼠」も濃い霧の中で眠ってしまいそうに頼りない。
彼らは自分の探しているものがわからず、しかしそれが見つかるとも思っていないので、本気でそれを探そうとも思っていないのだと思う。
ただ偶然に出会ったもの、自分を柔らかく受け入れてくれた思い出だけを頼りに、彼らはすっぽりと霧に包まれている。

感傷的である。手探りである。「風」が吹いていない霧は、いつまでも晴れる気配がない。ぐっしょりと全てが濡れていく。


冒頭の「見知らぬ土地の話を聞くのが病的に好きだった」というフレーズが、私も病的に好きだ。

レビュー投稿日
2012年8月4日
読了日
2012年8月2日
本棚登録日
2012年8月2日
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『1973年のピンボール (講談社文庫)』のレビューへのコメント

yuu1960さん (2012年8月9日)

ノルウェーの森の出版後に読んだ小林信彦さんの書評に、直子の死は「ピンボール」で既に触れられているとあり、驚きました。読み返してみて、自分は何を読んでたんだろうと呆れたものでした。
ピンボールは直子の死に対し、言うべき言葉を見付けられず、物語が止まっているんじゃないかとも思います。

抽斗さん (2012年8月12日)

私はこの作品の直子が『ノルウェイの森』の直子と同一人物とはあまり思えず、さらっと読み飛ばしてしまっていたのですが、なるほどこの作品全体を覆っている「凍える倦怠」は、彼女の死のせいと読むとなんだか納得しました。
コメントどうもありがとうございます。yuuさんのコメント、毎回とてもうれしく思っています(^^)。

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