江戸俳画紀行 蕪村の花見、一茶の正月 (中公新書)

  • 中央公論新社 (2008年1月25日発売)
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江戸時代を生きた俳人23人の俳画を巡る新書。

俳画は現代の「イラスト」や「漫画」にも似た雰囲気があって、見るのが楽しい。あまり深いことを考えず、「かわいいなー」だとか「うまいなー」だとか「楽しそうだなー」と思いながら、つらつら観て和む。

この新書は、そんな江戸時代の俳人23人の俳画をそれぞれ一つずつ取り上げ、語っていくものである。
23人もの俳人を紹介しているので、一人ひとりに割かれるページ数はそう多くない。それゆえ、あまりお堅い印象はなく、むしろ俳画をめぐる端正なエッセイ集にも似た味わいである。

軽妙な語り口ながらも、それぞれの俳人の作品やエピソード、生まれや人間関係などを通して、その個性や人柄に触れるような文章が読んでいて心地よかった。

この中で私が特に惹かれたのは、井原西鶴を取り扱った章である。
西鶴は、以前からなんだか気になる人だと思っていて、その人間性についてもっと知りたいと思っていた。すると、本書で西鶴のことを「月夜をゆく男」として、「心に何か言い知れぬ寂寞を抱いていた」人間だったのではないか、という文章に突き当たった。

「西鶴は一昼夜に2万3千余句を吐くという離れ業をやってみせ、談林俳諧の先頭を切って走り、『好色一代男』を書き、おそらくは絵も描いた。なんでもできた。だが、人間西鶴は、暗いとか陰気というのではないが、ただ月の下を一人で歩いていた人であるような気がする。」p24より

これを読んで私は「まさに!」と思った。
私が気になるのも、まさにその「なんでもやって、デタラメにすごくて、しかも巨大な寂寞感」を感じるところなのだ。
うーん、西鶴、気になるぞ。。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 遠くへ、もっと近くへ
感想投稿日 : 2012年5月31日
読了日 : 2012年5月29日
本棚登録日 : 2012年5月28日

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