正確に星をつけると、3・5、というのが正直な感想だ。面白かった部分と、「うーん」という部分とが混ざった結果、落ち着いた重さがそのくらいである。
中南米を舞台にした冒険小説。そこに、家族の問題や政治の要素、マヤ文明の影が見え隠れする。基本的な構成としては面白いし、光景を想像しながら読み進めると本当にワクワクする。
イマイチなところは、大きく分けて3点。
まず、遺跡やジャングルの様子含め、マヤ関係の描写が想像していたより少ないこと。私の場合はそもそもマヤ文明に対して興味があったこともあり、今回の内容はちょっと物足りなかった。「成人式」という伝統的な儀式が描かれてもいるが、ジャガーが関連するところが多少マヤを意識しているくらいで、あんまり、この独特の文化圏を生かせてないように感じた。神話や遺跡について、どうせ出すならもう少し深く絡めてほしかった。
次に、物語が全体的に冗長な点。サクッと進めばいいところを、無駄にページを食う。どうでも良すぎる会話まで書いてあったり、たいして伏線にもならないなんてことない描写が続いたりする。比喩や例え話もやたらしょっちゅう出てきて、ハイハイ分かりましたよ、もう充分ですよ先行ってくださいよ、的気分になる。これは、上巻の最後に書いてあった説明を読んで納得した。もともと、全6巻で刊行されたシリーズものの書き下ろし小説だったらしい。それを、上下巻にまとめたのが今回私が手にしたバージョンのようだ。なるほどね、連載みたいな感じだったのね、それならまぁ、納得。細かいところまで書きたくなっちゃうわな、ページ数も稼がなきゃいけないし、一気に最後まで書いたわけじゃないから、伏線とその収集ができていない部分があるのも分からなくはない。
最後に、上記の冗長さとも関連するけど、なんというか、厨二病臭さが全体的に漂っていてやや辟易する。血の繋がりがないなもしれない兄妹、ものすごくイケメンの謎の少年(しかも後から王族だとわかる)、それぞれが一癖あるけど天才肌の家族たち、ピンチの時に超人的な力を発揮する主人公、クサ過ぎるくらいの決め台詞の数々…。もともと、恩田さんの作品にはそういう要素があって、そこがまた彼女の魅力にもなっていると思うのだけど、今回はなぁ〜…やり過ぎだなぁ〜。少年マンガでこの展開だったら程良かったかもしれない。
じゃあ良かった点はどこなのか、というと、やっぱり、ジャングルやら地下の町やらトンネルやら、非日常の空間を縦横無尽に動き回って物語が進んでいくところ。日本で生活していたら見聞きできない世界観だから、ちょっとした映画を観た気分で楽しむことができる。火山噴火のシーンもなかなか緊張感があって良い。
これ、6冊をまとめる時に、もう一回手を入れて、無駄を省いて完成版にしたらきっともっと分かりやすくエンターテイメントになっただろうな。内容を削ったぶん、カラー写真とか著者の現地滞在記とかをちょこっと追加してさ。そういう意味では、シリーズとして出していたものをただ合冊にしただけ、というのは、なんだか勿体無い気がする。
- 感想投稿日 : 2015年8月15日
- 読了日 : 2015年8月15日
- 本棚登録日 : 2015年8月15日
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